「相続前に何もしていない」世帯が8割弱|国交省調査でわかった空き家の分かれ道

国土交通省が、全国の空き家所有者を対象にした実態調査の結果を公表しました。「相続する前に何か対策をしていたか」という質問への回答が、今後その空き家がどうなるかを大きく左右しているようです。今日はこの調査結果を、数字とともに整理してみます。
国土交通省住宅局は令和7年8月、全国の空き家所有者を対象にした「令和6年空き家所有者実態調査」の結果を公表しました。この調査では、空き家をどのように取得したか、相続の前に何らかの対策を講じていたか、今後その空き家をどうする意向かといった項目が、実際の所有者への調査に基づいて集計されています。「相続前に対策をしていたかどうか」で、その後の空き家の行方に統計的な差が出ているという結果が示されており、実家じまいを考えるうえで参考になる内容です。
作成日:2026-09-18
更新日:2026-09-18
調査の概要
「空き家所有者実態調査」は、国土交通省が空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく施策の基礎資料とするため、数年おきに実施している調査です。今回公表された令和6年調査では、全国の空き家所有者を対象に、空き家を所有するに至った経緯、管理の状況、今後の利用意向等についてアンケートが行われました。実際に空き家を所有している人本人への調査であるため、推測ではなく、所有者の実感に基づいた数字として参考にできます。
出典:国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月公表)(https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/R6_akiya_syoyuusya_jittaityousa.html)
このような所有者本人への調査は、空き家に関する制度(空家等対策の推進に関する特別措置法に基づく施策等)を検討するうえでの基礎資料として位置づけられています。行政側が外から見た「建物の老朽度」等の物理的な状況だけでなく、所有者自身が置かれている事情や意向を把握することで、より実態に即した空き家対策を検討する狙いがあると考えられます。

空き家の取得方法、6割近くが「相続」
調査ではまず、所有している空き家をどのように取得したかを尋ねています。結果は、「相続」によって取得したという回答が57.9%で、他の取得方法(購入、贈与等)を大きく引き離す最多の回答となりました。つまり、空き家所有者の半数以上は、自分から望んで空き家を持つに至ったわけではなく、親などの死亡・住み替え等をきっかけに、結果として空き家を引き継ぐことになった人たちだということが分かります。
この数字は、実家じまいというテーマそのものが、決して一部の人だけの特殊な悩みではなく、空き家問題の主要な発生源が「相続」であることを裏付けるものと言えそうです。当サイトが相続・実家じまいに関する情報を中心に扱っているのも、こうした背景があります。
相続前に「対策をした」世帯は全体の2割強
今回の調査で特に注目したいのが、相続によって空き家を取得した世帯に対して「相続前に何らかの対策を講じていたか」を尋ねた設問です。結果は、「対策を講じていなかった」が77.0%、「対策を講じていた」が23.0%と、対策をしていなかった世帯が4分の3以上を占めました。
「対策を講じていた」と回答した23.0%の内訳は、次のとおりです。
| 相続前に講じていた対策 | 割合(相続取得世帯全体に対する比率) |
|---|---|
| 被相続人(親等)との話し合い | 16.7% |
| 遺言の作成支援 | 1.8% |
| 成年後見制度・家族信託の活用 | 1.3% |
| その他の対策 | 3.2% |
| 対策なし | 77.0% |
最も多い対策は「被相続人との話し合い」の16.7%で、遺言の作成支援や、成年後見・家族信託といった法的な仕組みの活用は、いずれも2%に満たない水準にとどまっています。口頭での話し合いはある程度行われているものの、法的な備え(遺言・信託等)まで進んでいる家庭はごく一部という実態が見えてきます。
図:相続前に対策を講じていた世帯の割合(国交省「令和6年空き家所有者実態調査」より)
空き家になった理由は「死亡」が最多、次いで「施設入居」
調査では、その住宅が空き家になったきっかけについても尋ねています。最も多かったのは「死亡」で43.9%、次いで「別の住宅に転居」が39.0%、「老人ホームなどの施設に入居」が10.0%という結果でした。
ここで見逃せないのが、「施設入居」がきっかけで空き家になるケースが1割存在するという点です。親が亡くなる前、まだ元気なうちに老人ホーム等へ入居した時点で、実家はすでに「空き家」になっているということになります。つまり、相続が発生する(親が亡くなる)よりも前に、実家じまいについて考え始めるタイミングは実際にはもっと早く訪れている、というケースが一定数あるということです。
この「施設入居による空き家化」は、今後さらに増えていく可能性があります。高齢化が進み、要介護状態になってから在宅での生活を続けることが難しくなり、施設への入居を選ぶ世帯は今後も一定数存在すると見込まれるためです。「相続が発生してから空き家の問題を考える」のではなく、「親が施設に入居した時点で、実家をどうするかの検討を始める」という順序になっている家庭も少なくないと考えられます。この場合、まだ親が存命であるため、実家の処分(売却・解体等)を進めるには、原則として本人(または代理人)の意思確認や同意が必要になる点に注意が必要です。判断能力が低下している場合は、前述の成年後見制度の利用を検討する必要が出てくることもあります。

対策の有無で、その後の意向に差が出ている
今回の調査で最も注目したいのが、「相続前に対策を講じていたかどうか」と「今後その空き家をどうしたいか」という意向との関係です。調査結果によると、相続前に対策を講じなかった世帯では、「今後も空き家として所有しておく」という意向が35.3%だったのに対し、対策を講じていた世帯では23.4%にとどまっており、10ポイント以上の差が見られました。
| 相続前の対策 | 「今後も空き家として所有」の意向 |
|---|---|
| 対策を講じていなかった | 35.3% |
| 対策を講じていた | 23.4% |
つまりこういうこと!
この調査結果だけで「対策をすれば必ず空き家を放置せずに済む」と断定することはできませんが、事前に家族で話し合っていた世帯のほうが、相続後に売却・解体・活用等、何らかの行動につながりやすい傾向があるとは言えそうです。逆に言えば、何も話し合わないまま相続を迎えた実家は、そのまま空き家として塩漬けになりやすい、ということかもしれません。
「話し合い」「遺言」「家族信託・後見」は何が違うのか
調査結果に出てきた3つの対策は、それぞれ性質がまったく異なります。法的な効力を持つかどうか、判断能力が低下した「生前」もカバーするかどうかという2つの軸で整理すると、違いがつかみやすくなります。
| 対策 | 法的効力 | いつから機能するか | 主な目的 |
|---|---|---|---|
| 被相続人との話し合い | なし(口約束) | 話し合った時点から | 家族間の意思疎通・認識合わせ |
| 遺言の作成 | あり(要式を満たせば) | 死亡後(相続開始時) | 財産の分け方を指定する |
| 成年後見制度 | あり(家庭裁判所が選任) | 判断能力低下後、申立て・審判を経て | 本人の財産・生活を保護する |
| 家族信託 | あり(信託契約) | 契約時点から(判断能力があるうちに締結) | 財産の管理・処分を家族に託す |
この中で唯一「口約束」にとどまるのが話し合いですが、法的効力がないからといって無意味というわけではありません。むしろ、遺言や家族信託を検討する前提として、まず家族の意向を共有しておくという意味で、最初の一歩になりやすい対策だと考えられます。一方で、判断能力が低下した後に実家の売却等が必要になった場合、話し合いだけでは対応できず、成年後見制度の利用が必要になることがあります。判断能力があるうちに財産管理の方針を決めておきたい場合は、家族信託という選択肢もあります。いずれも制度の詳細は司法書士・弁護士等の専門家にご確認ください。
実家じまいとの関わり
今回の調査結果は、「親が元気なうちに何を話しておくべきか」という問いに対して、断定的な答えではなく、統計的な傾向として一つの参考情報を与えてくれます。話し合いの内容を書面に残す方法としては自筆証書遺言書保管制度があり、遺言以外の形で財産の管理を託す方法として家族信託や成年後見制度もあります。判断能力が低下した後の財産管理については、成年後見に関する統計を整理した記事もあわせてご覧ください。すでに相続が発生し、相続人が複数いて実家をどうするか迷っている場合は相続人が複数いる場合、実家はどうなる?、そもそも実家をどうするか方針が決まっていない場合は空き家、売る・貸す・解体で迷っている方へも参考にしてください。逆に、まだ相続が発生していない、親が元気なうちの段階であれば、まずは家族での話し合いから始めてみる、というのが今回の調査結果からも読み取れる現実的な一歩と言えそうです。
よくある質問
Q. 「対策」とは具体的に何をすればいいのですか?
調査では「被相続人との話し合い」「遺言の作成支援」「成年後見制度・家族信託の活用」等が選択肢として挙げられています。何から始めればよいか分からない場合は、まず家族間で実家の今後について話し合っておくことが、最も取り組みやすい第一歩と言えそうです。法的な備えが必要かどうかは、司法書士等の専門家にご相談ください。
Q. 親がまだ元気なうちに実家じまいの話をするのは、縁起が悪いのではないでしょうか?
感じ方は人それぞれですが、今回の調査結果が示すように、老人ホーム入居等をきっかけに、親が生きているうちから実家が空き家になるケースは実際に1割程度存在します。「万一のときにどうするか」ではなく「今後の暮らし方をどう考えるか」という切り口で話を切り出す家庭もあるようです。
Q. この調査は日本全国のすべての空き家を対象にしていますか?
国土交通省が実施したサンプル調査であり、全国のすべての空き家所有者を対象とした悉皆調査ではありません。統計的な傾向を示すものとして参考にしていただくものであり、個々のケースに必ず当てはまるとは限りません。
Q. 家族信託や成年後見制度は、誰に相談すればいいですか?
家族信託の設計や成年後見の申立てについては、司法書士・弁護士が専門的に扱っています。当サイトは特定の業者・専門家へのご紹介や送客は行っておりませんので、お住まいの地域の司法書士会・弁護士会の相談窓口や、地域包括支援センター等にご相談ください。
Q. 遺言と家族信託、両方とも準備しておいたほうがいいのでしょうか?
目的が異なるため、家庭の状況によっては両方を組み合わせるケースもあります。遺言は死亡後の財産の分け方を指定するものであるのに対し、家族信託は生前の判断能力低下に備えて財産の管理・処分を家族に託す仕組みです。どちらが必要か、あるいは両方必要かは、財産の内容や家族構成によって異なるため、司法書士等の専門家に個別に相談することをおすすめします。
Q. 「対策なし」が悪いということでしょうか?
調査結果は統計的な傾向を示すものであり、「対策をしなかったこと」が良い・悪いという価値判断を示すものではありません。家庭の事情によっては、話し合いや法的な備えを行うタイミングがなかった、あるいはその必要性を感じていなかったというケースも当然あります。あくまで、対策の有無とその後の意向には一定の関連が見られる、という統計的な事実として捉えていただければと思います。
まとめ
国土交通省の調査からは、空き家の6割近くが相続によって生まれていること、そのうち相続前に何らかの対策を講じていた世帯は2割強にとどまること、そして対策の有無によってその後の意向に差が見られることが分かりました。「対策」といっても、家族で話し合うことから始められる範囲のものであり、遺言や家族信託といった法的な仕組みは、その延長線上にある選択肢の一つです。
全国の空き家は約900万戸にのぼるとされていますが(詳しくは空き家900万戸の内訳、実は半数近くが「賃貸・売却用」?で整理しています)、その多くが今回のような「相続をきっかけに、特に対策のないまま所有することになった住宅」の延長線上にあると考えられます。実家じまいを「相続が発生してから考えること」ではなく、「親が元気なうちから少しずつ話しておけること」として捉え直すきっかけに、この調査結果がなれば幸いです。
出典
- 国土交通省住宅局「令和6年空き家所有者実態調査結果」(令和7年8月公表)https://www.mlit.go.jp/jutakukentiku/house/R6_akiya_syoyuusya_jittaityousa.html