空き家900万戸の内訳、実は半数近くが「賃貸・売却用」?種類別データを見る

「空き家900万戸」というニュース、当サイトでも何度か触れてきましたが、実はこの900万戸、中身は一様ではありません。今回はその内訳を詳しく見ていきます。
総務省の「令和5年住宅・土地統計調査」で公表された全国の空き家数899万戸という数字は、実家じまいを考えるうえでよく引用される統計です。ただし、この900万戸すべてが「放置された空き家」というわけではありません。統計上、空き家は4つの種類に分けられており、それぞれ性質が大きく異なります。この記事では、その内訳を整理します。
最終確認日:2026-09-05
空き家は4種類に分類される
総務省統計局は、住宅・土地統計調査において、空き家を次の4つの種類(区分)に分けて集計しています。
| 種類 | 内容 |
|---|---|
| 賃貸用の住宅 | 新築・中古を問わず、賃貸のために空き家になっている住宅 |
| 売却用の住宅 | 新築・中古を問わず、売却のために空き家になっている住宅 |
| 二次的住宅 | 別荘や、週末だけ利用するセカンドハウス等 |
| 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家 | 上記のいずれにも該当しない空き家(転勤・入院等で長期不在の住宅、取り壊す予定の住宅等を含む) |
出典:総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果」
なお、この4区分のうち最後の「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、前回(平成30年)調査までは「その他の住宅」という名称で集計されていました。実家じまいの文脈で問題になりやすい「使われないまま放置されている空き家」は、主にこの区分に含まれます。
令和5年調査の内訳データ
令和5年調査の結果では、空き家899万戸のうち、種類別の内訳(前回調査からの増減)はおおむね次のような傾向が報告されています。
- 賃貸用の住宅:空き家全体の中で最も大きな割合を占める区分。前回調査から増加
- 売却用の住宅:空き家全体に占める割合は比較的小さいものの、前回調査から増加
- 二次的住宅:他の区分に比べて件数は少なく、横ばい傾向
- 賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家:385万戸で、令和5年時点の総住宅数に占める割合は5.9%。平成30年調査の349万戸から36万戸増加
ここが間違えやすいので注意!
「空き家900万戸」という数字だけを見ると、大量の放置空き家が存在するように感じられますが、実際には半数近くが「賃貸用」「売却用」として市場に出ている、いわば流通過程にある空き家です。実家じまいで特に注意が必要なのは、市場に出ていない「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」(385万戸)の部分であり、全体の数字と混同しないよう注意してください。
なぜ「その他の空き家」だけが増え続けているのか
賃貸用・売却用の空き家は、不動産市場の需給に応じて増減する性質がありますが、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」は、調査のたびに増加を続けている点が特徴です。この区分には、相続したものの活用方法が決まらないまま放置されている実家が多く含まれると考えられており、少子高齢化や人口減少が進む地域ほど、この区分の空き家が増える傾向にあると指摘されています。
国土交通省の資料でも、こうした「その他の空き家」は、所有者の意向が定まらないために市場に出てこない空き家として、政策上の課題として位置づけられています。空き家対策特別措置法に基づく「特定空家等」「管理不全空家等」の指導・勧告も、主にこの区分に該当する空き家が対象になります。
空き家率にも地域差がある
空き家の内訳だけでなく、総住宅数に占める空き家の割合(空き家率)そのものにも、都道府県によって大きな差があります。一般的に、地方部・過疎地域ほど空き家率が高い傾向にあるとされていますが、一方で別荘等の二次的住宅が多い観光地・保養地では、二次的住宅を含めた空き家率が押し上げられているケースもあり、単純に「空き家率が高い=放置された実家が多い」とは言い切れない点にも注意が必要です。
都道府県別・市区町村別の空き家率や、地価・人口の推移とあわせた詳しいデータは、当サイトの空き家率で見る地域比較、地域を選んで見る、地価・人口・空き家の推移で、都道府県・市区町村単位で確認できます。
調査は「サンプル調査」であることにも注意
住宅・土地統計調査は、国内すべての住宅を1軒ずつ調べる「全数調査」ではなく、全国から抽出した調査区・住戸を対象にした「標本調査(サンプル調査)」であり、そこから統計的に全国・都道府県・市区町村の推計値を算出しています。5年に一度実施される調査であるため、公表される数字は調査時点のスナップショットであり、その後の状況(相続の発生、解体、活用等)はリアルタイムには反映されません。次回調査は令和10年(2028年)に実施される見込みです。
「空き家率」の計算のしかたにも注意
ニュース等で見かける「空き家率13.8%」といった数字は、総住宅数に占める空き家(4区分すべての合計)の割合を指しています。この分母には、賃貸用・売却用として一時的に空いている住宅も含まれるため、「空き家率が高い=地域の1割超が放置されている」という意味ではありません。実家じまいの文脈で本当に気にすべき数字は、空き家率全体よりも、「賃貸・売却用及び二次的住宅を除く空き家」の割合や、その地域における特定空家等・管理不全空家等の認定件数といった、より個別具体的な指標だと考えられます。
また、令和5年調査における全国の空き家率13.8%という数字自体も、前回(平成30年)調査の13.6%から0.2ポイントの上昇にとどまっており、伸び率としては緩やかである点も付け加えておきます。空き家「率」の伸びよりも、実数(900万戸、うち「その他の空き家」385万戸)の増加ペースの方が、政策上は課題として強調される傾向にあります。
実家じまいとの関わり

統計上「空き家」と一括りにされていても、賃貸・売却市場に出ている空き家と、活用方針が決まらないまま放置されている空き家とでは、抱えている課題がまったく違います。自分の実家がどちらに近いのか、一度整理してみると今後の方針を考えやすくなります。
相続した実家を「賃貸用」「売却用」として早めに市場に出すことができれば、統計上も政策上も比較的リスクの低い空き家として扱われます。一方で、活用方針が決まらないまま放置すると、「その他の空き家」として年々増加している区分に加わることになり、特定空家等・管理不全空家等の指導対象になるリスクも高まります。空き家をどうするか迷っている場合は空き家、売る・貸す・解体で迷っている方へ、空き家バンクの活用は空き家バンクの使い方ガイドもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 自分の実家がどの区分に該当するか、統計上の記録から調べられますか?
住宅・土地統計調査は、個々の住宅を特定できる形では公表されていない統計調査(サンプル調査に基づく推計値)のため、特定の住所がどの区分に分類されているかを調べることはできません。あくまで全国・都道府県・市区町村単位の集計データとして公表されています。
Q. 「賃貸用」の空き家として登録すれば、特定空家等に指定されませんか?
統計上の区分と、空家法上の「特定空家等」「管理不全空家等」の認定は別の制度です。賃貸用として市場に出していても、建物の管理状態が著しく悪ければ認定の対象になり得ます。逆に、統計上「その他の空き家」に分類されていても、適切に管理されていれば認定の対象にはなりません。
まとめ
「空き家900万戸」という数字は、賃貸用・売却用・二次的住宅・その他の空き家という4つの異なる性質の集合体です。実家じまいで特に注意すべきなのは、年々増加を続けている「その他の空き家」の区分であり、早めに賃貸・売却等の方針を決めることが、この区分に加わることを防ぐ一つの方法になります。
出典
- 総務省統計局「令和5年住宅・土地統計調査 調査の結果」https://www.stat.go.jp/data/jyutaku/2023/tyousake.html
- 国土交通省「空き家の現状と論点」