要介護者の災害対策マニュアル|避難が難しい人を守るには?

gonzo

地震や台風などの大規模災害が起きたとき、
「避難が難しい人」=要介護者の命をどう守るかは、家庭・地域・社会全体の大きな課題です。

  • 車椅子での移動が難しい
  • 持病や認知症があるため混乱しやすい
  • 医療機器や薬の管理が必要
  • 自宅に閉じこもったまま、誰にも気づかれない

災害時の混乱の中で、こうした要配慮者が「取り残される」現実が、過去の災害でも繰り返されてきました。

本記事では、要介護者がいる家庭・介護従事者・地域住民が「今できる備え」を徹底的にマニュアル化してご紹介します。

この記事を書いた人>
シャア

学生時代から防災や災害対策に強い関心を持ち、20年以上にわたり情報を収集・整理。防災訓練のボランティア経験や、災害時の避難準備を日常的に実践してきた「防災オタク」。最新の防災グッズや自治体の防災計画まで幅広く研究し、実生活に役立つ防災知識をわかりやすく伝えています。


なぜ要介護者の防災対策が重要なのか?

● 実際の被害から見える課題

災害名問題となった点
阪神淡路大震災(1995年)要介護者の避難が遅れ、火災や建物倒壊で犠牲多数
東日本大震災(2011年)福祉避難所が不足し、要介護高齢者の避難後死亡が多発
熊本地震(2016年)在宅介護者の支援体制が混乱。連絡が取れず孤立事例も

● 要介護者のリスク5つ

  1. 避難の移動が困難(歩行困難・車椅子・ストレッチャー等)
  2. 判断能力の低下(認知症・知的障害・精神障害)
  3. 医療的ケアが必要(酸素、吸引、インスリン、透析など)
  4. 介護者不在時の対応が困難
  5. 物資不足による体調悪化・命に関わる合併症

災害前に整えておくべき「3つの備え」

① 個人の備え|家庭でできる準備

項目チェック内容
医療用品1週間分の薬/お薬手帳/処方歴の控え/医療機器バッテリー
食事関連嚥下対応食/流動食/介助用スプーンなど
移動用具車椅子・歩行器・スロープ・介助ベルト
トイレポータブルトイレ・尿とりパッド・消臭袋
情報カード氏名・年齢・連絡先・持病・障がい・要支援内容等を記載

② 支援者との連携|家族・地域・介護者の協力体制

  • 家族内で「災害時の行動シナリオ」を共有(誰が何をするか明確に)
  • 民生委員・自治会・近隣住民とのつながりを平時から作る
  • 介護事業所・訪問看護・デイサービスとの連携確認

③ 公的支援制度の活用|“名簿登録”と“福祉避難所”

制度名内容
要配慮者支援名簿(災害時要援護者台帳)自治体に申請し、災害時に優先的支援が受けられる
福祉避難所高齢者・障がい者・医療的ケアが必要な人向けに開設される専門的避難所
福祉避難所の事前登録地域によっては、事前登録が必要。窓口で確認を

避難行動のシミュレーション|状況別に考える「動けるかどうか」

● 自宅から避難所まで歩けない場合

手段備えとポイント
車椅子スロープ/段差解消の準備/押す人の確保
移乗・抱きかかえ介助ベルト・担架・キャスター台車の活用
避難所まで車で移動乗降補助機器、駐車スペースの確認(要申請)

● 夜間・豪雨・地震直後の避難を想定した準備

  • ヘッドライト・反射板・笛など視認性と呼びかけに備える
  • 防水バッグ/車椅子用レインカバーなどを玄関に常備
  • 家族が不在時の「代理避難支援者リスト」を用意しておく

立場別の防災対策|家族・介護職・施設でできること

● 家族の役割

  • 避難時は「荷物係・介助係・情報係」と役割分担
  • 「1分でも早く、迷わず動ける」よう、毎年1回は防災会議を実施

● 介護職の視点

  • ケアプラン内に「災害時の対応欄」を設ける
  • 利用者の防災レベルに応じた支援マニュアルの作成
  • 施設・在宅どちらも「食事・薬・医療対応」の備えを施設ごとに見直し

● 施設・事業所の備え

項目内容
入居者の避難計画介助人員の配置/移動ルートの確保/車両の準備
医療体制医師不在時の緊急マニュアル・酸素濃縮器の予備バッテリー
トイレ・入浴ポータブルトイレ/衛生用品/体拭きセットなど

自宅避難という選択肢|避難しないリスクとメリット

● 在宅避難が適している場合

  • 建物の安全が確保されている(耐震性・火災リスク低)
  • ライフラインがある程度使用可能(または備蓄あり)
  • 福祉避難所が遠い・満員・環境が合わない

要介護者の生活リズムや尊厳を守る観点でも有効な場合あり

● 在宅避難時のポイント

対策詳細
ライフライン備蓄電気:蓄電池、ガス:カセットコンロ、水:タンク10L〜
トイレ携帯トイレ・吸水パッド・消臭剤などの備蓄
情報共有親族・介護事業所・ご近所への「在宅避難中」の連絡

地域・自治体の役割と期待できる支援

  • 自治体の要配慮者支援計画を確認(自治体HP・地域包括支援センター)
  • 地域の「個別避難計画」策定(内閣府方針で2024年から全国展開)
  • 「地域ケア会議」や「高齢者見守り協議会」などの取り組みに参加する

被災事例に学ぶ|実際に要介護者が直面した現実

● 東日本大震災・福島県・90代女性(要介護4)

「津波が来るとは分かっていたけど、車椅子で坂道を登れなかった。隣の若夫婦が背負ってくれたから助かった」

● 熊本地震・介護施設勤務者の証言

「断水でおむつの交換や入浴ができず、感染症のリスクが一気に高まった。トイレと水の備えの重要性を痛感」


まとめ|「一人で避難できない人」を守れる社会へ

要介護者の防災対策は、

  • 家族の備え
  • 地域のネットワーク
  • 制度の利用
  • 情報共有と訓練

この4つの連携があって初めて「命を守る仕組み」になります。

“備えは代理できるが、逃げることは代理できない”

この原則を忘れず、本人の意思を尊重しつつ、
「一緒に準備し、備える体制」を今から築いていくことが何よりも大切です。

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