企業型DCの「自動移換」に注意|資産が運用されず手数料だけ引かれる仕組みと相続時の見落としリスク

親の年金資産を調べていて「iDeCo」は見つかったけど、実は会社員時代の「企業型DC」が転職のときに手続き漏れで放置されたまま、というケースが少なくないようです。「自動移換」という仕組みについて整理しました。
企業年金連合会の調べによると、退職後に手続きをしないまま資産が「自動移換」された状態の人(自動移換者)は、2024年3月末時点で全国に約129万人いるとされ、10年前と比べて約3倍に増加していると報じられています。実家じまい・相続の場面でも、親が転職経験を持つ場合、この自動移換された資産の存在に相続人が気づかないままになっているケースが起こり得ます。この記事では、自動移換の仕組みと、相続時に注意したいポイントを整理します。
作成日:2026-09-14
更新日:2026-09-14

自動移換とは
企業年金連合会の公式サイトによると、自動移換とは、企業型確定拠出年金(企業型DC)の加入者が退職後6ヶ月以内に、他の年金制度への移換手続きを行わなかった場合に、個人別の管理資産が自動的に国民年金基金連合会に移換される仕組みです。転職や退職の際に、企業型DCの資産をどうするかの手続きを忘れてしまうと、この自動移換の対象になります。
出典:企業年金連合会公式サイト「自動移換」(用語集)。
なぜ自動移換が起きるのか(6ヶ月ルール)
企業型DCの加入者が退職すると、次のいずれかの手続きを、原則として退職後6ヶ月以内に行う必要があります。
- 転職先の企業型DCへの移換
- 個人型年金(iDeCo)への移換
- 確定給付企業年金への移換
- 企業年金連合会への移換
- 脱退一時金の請求(一定の要件を満たす場合)
これらのいずれも行わないまま6ヶ月が経過すると、自動的に国民年金基金連合会に資産が移換されます。転職・退職のタイミングでは他の手続きも重なりやすく、「そのうち手続きしよう」と思っているうちに6ヶ月が過ぎてしまうというケースが多いようです。
図:自動移換が発生するまでの流れ
自動移換の主なデメリット
企業年金連合会は、自動移換の主なデメリットとして、次の2点を挙げています。
| デメリット | 内容 |
|---|---|
| 資産の目減り | 自動移換後は運用されないまま、管理手数料が差し引かれ続ける |
| 加入者期間の空白 | 自動移換されている期間は、老齢給付金の受給資格要件(通算加入者等期間)に算入されない |
出典:企業年金連合会公式サイト「自動移換」(用語集)。「運用されないのに手数料だけ引かれ続ける」という状態は、気づかず長期間放置するほど資産の目減りが大きくなります。
手数料の実際の金額
企業年金連合会公式サイトで公表されている手数料体系(2024年10月1日現在)を整理すると、次のとおりです。
| 項目 | 金額 |
|---|---|
| 自動移換時の手数料 | 4,348円 |
| 月額管理手数料 | 52円(年間624円) |
| 個人型年金(iDeCo)への再移換時 | 3,929円 |
| 企業型年金への再移換時 | 1,100円 |
出典:企業年金連合会公式サイト「自動移換」(用語集)。なお、手数料体系は制度改正により見直されることがあります。実際に自動移換の解消を検討する際は、その時点での最新の手数料を、企業年金連合会または移換先の運営管理機関に確認してください。

自動移換者数は10年で約3倍に増加
報道等で紹介されている企業年金連合会の調査によると、自動移換者数は2024年3月末時点で約129万人とされ、10年前と比べて約3倍近くに増加しているとされています。転職が一般的になり、企業型DCの加入者自体が増えている中で、手続き漏れによる自動移換者も比例して増えていると考えられます。
企業型DCを導入する企業自体も年々増加しており、終身雇用を前提としない働き方が広がる中で、企業型DCの資産を「持ち運ぶ」場面そのものが増えているという背景があります。国も自動移換者を減らすための取り組みを進めており、2024年12月からは自動移換の簡素化・自動化に向けた措置が開始されたと紹介されています。ただし、こうした制度改善が進んでも、本人・遺族が「そもそも資産の存在に気づいていない」場合は、簡素化の恩恵を受けられないまま放置され続けてしまいます。
ここが間違えやすいので注意!
本記事で紹介した自動移換者数の統計は、企業年金連合会の調査結果を紹介する報道等に基づくものであり、法務省・厚生労働省の一次資料による確定値ではありません。最新かつ正確な数値は、企業年金連合会の公式発表をご確認ください。
亡くなった後、自動移換の資産はどうなるか
自動移換されたまま加入者本人が亡くなった場合、その資産はiDeCoや企業型DCの死亡一時金と同様の考え方で、遺族が請求することになります。ただし、自動移換の解消・死亡一時金の請求のいずれについても、手続きの過程で所定の手数料が差し引かれる点には注意が必要です。死亡一時金の税務上の扱い(みなし相続財産、非課税枠等)については親のiDeCoはどう相続する?死亡一時金の確認方法・請求手続き・非課税枠をiDeCo公式情報から整理で詳しく解説しています。
自動移換された資産は、加入者本人が亡くなったことを運営管理機関側が自動的に把握してくれるわけではありません。遺族が請求手続きを行わない限り、その存在に気づかれないまま放置され続ける可能性があります。
また、iDeCoの死亡一時金と同様に、自動移換の資産についても請求には期限があるとされ、長期間放置すると相続財産としての扱いに切り替わったり、最終的に供託される可能性があると考えられます。正確な期限・手続きは、企業年金連合会または特定運営管理機関に確認することをおすすめします。「企業型DCなんて聞いたことがない」という思い込みだけで調査を終わらせず、確定申告書の控除欄や源泉徴収票の記載も手がかりにしながら確認すると、見落としを減らせます。
実家じまいとの関わり
実家じまいを進める中で、親の職歴(転職の有無)を確認し、企業型DCへの加入歴がなかったかを振り返ってみることをおすすめします。複数の勤務先があった場合、そのうちのどこかで企業型DCに加入していて、転職時の手続き漏れで自動移換されたまま、というケースも考えられます。手がかりとしては、確定申告書の控除欄、退職金規程、辞令関係の書類等が挙げられます。企業型DC・iDeCoの死亡時の確認方法・請求の流れ全般はこちらの記事で整理しています。
よくある質問
Q. 親が自動移換されているかどうか、生前に確認する方法はありますか?
企業年金連合会や、特定運営管理機関(自動移換者の資産を管理する機関)に問い合わせることで確認できる場合があります。本人確認のための書類等が必要になるため、詳しくは各機関の窓口にご確認ください。
Q. 「通算加入者等期間」に算入されないと、具体的にどう困るのですか?
企業型DC・iDeCoの老齢給付金は、原則として通算加入者等期間が10年以上ないと、60歳から受け取ることができません。期間が短いと受給開始年齢が段階的に引き上げられる仕組みになっているため、自動移換されている期間がこの通算期間に算入されないことで、老後の受け取り開始時期が想定より遅れてしまう可能性があります。在職中の方にとっては見過ごせない影響であり、早めに自動移換を解消しておく意味は、単に手数料を防ぐ以上にあると言えます。
Q. 自動移換されたまま長期間放置すると、資産がゼロになることはありますか?
月額管理手数料が資産から差し引かれ続けるため、資産額が少ない場合、理論上は目減りが続く可能性があります。具体的な取り扱いは企業年金連合会にご確認ください。
Q. 自動移換の解消は、相続人でも手続きできますか?
加入者本人が亡くなっている場合、相続人が死亡一時金として請求する形になります。生前の加入者本人以外が「解消」(他制度への移換)を行うことは想定されていないと考えられます。詳しくは企業年金連合会にご確認ください。
Q. iDeCoと企業型DC、両方で自動移換が起きることはありますか?
自動移換は企業型DCの制度に基づく仕組みです。iDeCo(個人型)は加入者自身が掛金を拠出する制度であり、性質が異なりますが、複数の勤務先で企業型DCに加入していた場合、それぞれの資産が別々に自動移換される可能性はあります。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 発生条件 | 企業型DC退職後6ヶ月以内に移換手続き等を行わない |
| デメリット | 運用されないまま手数料が引かれる、加入者期間に算入されない |
| 手数料の目安 | 移換時4,348円、月額52円 等(2024年10月時点) |
| 相続時の注意 | 本人死亡は自動検知されない。遺族が請求手続きを行う必要がある |
本記事の内容は2026年9月時点で確認できた企業年金連合会の公表情報を整理したものです。手数料や統計は今後変更・更新される可能性があるため、最新情報は企業年金連合会の公式サイトでご確認ください。当サイトは特定の業者・専門家へのご紹介や送客は行っておりません。
出典
- 企業年金連合会「自動移換」(用語集)https://www.pfa.or.jp/yogoshu/shi/shi75.html