相続の手続き・登記

共有名義の実家、一人が反対したら売れない?共有物分割請求の基本を整理

共有名義の実家、一人が反対したら売れない?共有物分割請求の基本を整理
gonzo
ごんぞう
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「実家、兄弟3人で共有名義のまま相続したけど、一人だけ売却に反対していて話が進まない」というご相談、実はとても多いです。今日は、共有名義の不動産で意見が割れたときに、法律上どういう選択肢があるのかを整理します。

実家を複数の相続人で共有名義のまま相続すると、「売りたい人」と「残したい人」の意見が分かれたときに身動きが取れなくなることがあります。この記事では、共有名義の不動産について「何ができて、何ができないのか」「話し合いがまとまらないときの法律上の手段」を、民法の条文と裁判例に基づいて中立的に整理します。

最終確認日:2026-09-04

共有名義の実家、そもそも何が問題になるのか

相続人が複数いる場合、遺産分割協議で誰か一人の単独名義にせず、法定相続分に応じてそのまま共有名義で登記する(あるいは相続人申告登記等で共有状態のままにする)ケースは珍しくありません。話し合いがまとまらないまま「とりあえず共有」にしておくと、後になって「売りたい」「貸したい」「そのままにしておきたい」で意見が割れたときに、法律上できること・できないことの区別が重要になってきます。

共有名義の不動産に関する行為は、民法上、「変更・処分行為」「管理行為」「保存行為」の3つに分類され、それぞれ必要な同意のレベルが異なります。この違いを理解しておくと、「何が単独でできて、何ができないのか」が整理しやすくなります。

行為の種類必要な同意具体例
変更・処分行為共有者全員の同意不動産全体の売却、大規模なリフォーム、更地にする解体等
管理行為持分の過半数の同意短期の賃貸借契約の締結、利用方法の変更等
保存行為共有者単独でできる不法占拠者への明渡し請求、家屋の現状維持のための修繕等

出典:民法第251条(共有物の変更)、第252条(共有物の管理)、第252条の5(保存行為)

実家「全体」を売るには、共有者全員の同意が必要

共有名義の不動産そのもの(実家の土地・建物全体)を売却する行為は「変更・処分行為」にあたるため、共有者全員の同意が必要です。相続人3人のうち2人が売却に賛成していても、残り1人が反対すれば、不動産全体を売却することはできません。これが「共有名義の実家は一人が反対すると身動きが取れなくなる」と言われる最大の理由です。

ここが間違えやすいので注意!

共有者の一人が、他の共有者に無断で不動産全体を売却する契約を結んでも、その契約は他の共有者の持分については効力を持ちません。逆に言えば、共有者全員の実印・印鑑証明書等がすべて揃わない限り、不動産全体の売買契約・移転登記は基本的に成立しません。

自分の「持分」だけなら、単独で売却できる

ごんぞう
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ここは誤解されやすいポイントです。「実家全体」を売るのと「自分の持分」を売るのは、法律上まったく別の話になります。

民法第206条は、所有者が自分の所有物を自由に使用・収益・処分できると定めています。共有者にとっての「自分の持分」は、この所有権の一部にあたるため、自分が持っている共有持分だけを売却する行為は、他の共有者の同意なく単独で行うことができます。売却先は、他の共有者でも、共有関係のない第三者(不動産買取業者等)でも構いません。

ただし、この点には現実的な注意点もあります。

  • 持分のみを買い取る一般の個人・第三者は少なく、実務上は共有持分専門の買取業者に売却されるケースが多いとされています
  • 持分だけの売却は、不動産全体を売却する場合に比べて価格が低く評価される傾向があるとされています
  • 見ず知らずの第三者が新たな共有者になることで、残りの共有者(親族)との関係がかえって複雑になることがあります

法律上「できる」ことと、実際に「望ましい」選択かどうかは別の問題です。持分売却を検討する場合も、他の共有者への事前の相談や、専門家への相談を挟むことをおすすめします。

話し合いがまとまらないときの「共有物分割請求」

民法第256条第1項は、各共有者は、いつでも共有物の分割を請求することができると定めています。これを「共有物分割請求」と呼びます。共有者間の協議で分割方法がまとまらない場合、共有者は裁判所に「共有物分割請求訴訟」を提起することができます(民法第258条)。

裁判になった場合、裁判所は次の3つの方法のいずれかで分割を命じます。

分割方法内容
①現物分割不動産を物理的に分割し、各共有者が個別に所有する方法(土地の分筆等)。民法上、原則的な方法とされる
②代金分割(競売分割)不動産を競売にかけ、売却代金を持分割合に応じて分配する方法
③全面的価格賠償特定の共有者が不動産を単独で取得する代わりに、他の共有者へ持分相当額の金銭を支払う方法

建物のように物理的な分割が難しい共有物については、最高裁判所の判例で②③の方法も認められています。最高裁昭和62年4月22日判決は、持分の価格に応じた分割で過不足が出る場合に金銭で調整する「部分的価格賠償」を認め、さらに最高裁平成8年10月31日判決は、共有物の性質・共有者の希望・取得者の支払能力等を総合的に考慮したうえで、特定の共有者に取得させ、他の共有者には持分相当額を金銭で支払わせる「全面的価格賠償」の方法も、一定の要件のもとで許容されると判断しました。

ここが間違えやすいので注意!

共有物分割請求訴訟は、「必ず自分の希望通りの分割方法になる」ことを保証するものではありません。裁判所がどの分割方法を選ぶかは、不動産の性質・共有者の人数や持分割合・利用状況等の個別の事情によって判断されます。また、訴訟には時間・費用もかかるため、まずは共有者間の協議、次に調停等、段階を踏んで検討することが一般的とされています。具体的な進め方は弁護士にご相談ください。

令和5年4月、共有者が「所在不明」な場合の新しい制度もできた

共有者の中に、連絡が取れない・所在が分からない人がいるというケースも、実家の相続では珍しくありません。令和3年の民法改正により、令和5年4月1日から次のような制度が新たに利用できるようになりました。

  • 所在等不明共有者の持分取得制度:裁判所に申し立てることで、所在が分からない共有者の持分を、他の共有者が取得できる制度。取得する共有者は、不動産鑑定等をもとに算定された金額を法務局に供託する必要があります
  • 所在等不明共有者の持分譲渡制度:所在不明の共有者の持分について、裁判所の関与のもと、第三者に譲渡することを可能にする制度

あわせて、共有物の管理に関するルールも見直され、所在等不明の共有者がいる場合、裁判所による一定期間の公告を経れば、それ以外の共有者全員の同意(変更行為の場合)または持分の過半数(管理行為の場合)で決定できるようになりました(民法第251条第2項、第252条第2項)。これにより、以前は「共有者全員の同意」が事実上取れず手詰まりになっていたケースでも、対応できる道が開かれています。

出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」

実家じまいとの関わり

ごんぞう
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共有名義のまま放置すると、次の世代(自分の子ども)にまで共有関係が引き継がれ、権利関係がさらに複雑になっていくこともあります。早めに方針を決めておくことをおすすめします。

実家を「とりあえず共有名義」で相続すること自体は違法ではありませんが、共有者が増えるほど、あるいは世代が進むほど、全員の同意を取り付けるハードルは上がっていきます。実家じまいを進める中で共有名義の話が出てきた場合は、①まず共有者間で率直に希望をすり合わせる、②まとまらなければ調停・共有物分割請求訴訟も選択肢に入れる、③所在不明の共有者がいる場合は令和5年の新制度の利用を検討する、という順序で考えると整理しやすくなります。相続人が複数いる場合の基本的な整理は相続人が複数いる場合、実家はどうなる?、空き家を売る・貸す・解体で迷っている場合の考え方は空き家、売る・貸す・解体で迷っている方へもあわせてご覧ください。

よくある質問

Q. 共有者の一人が実家に一人で住んでいます。他の共有者は家賃を請求できますか?

共有者の一人が共有物の全部を使用する場合、他の共有者は、自己の持分を超える使用の対価を請求できるとされています(民法第249条第2項、令和3年改正で明文化)。ただし実際にいくら請求できるかはケースごとの事情によるため、具体的な金額や進め方は弁護士にご相談ください。

Q. 共有物分割請求をすると、必ず裁判になりますか?

いいえ。共有物分割請求は、まず共有者間の協議で行うのが基本です。協議がまとまらない場合に初めて、裁判所への訴訟(共有物分割請求訴訟)という手段が使えるようになります。訴訟の前に、話し合いの場を設ける調停等が選択されることもあります。

Q. 共有持分だけを売った場合、実家に住み続けている他の共有者はどうなりますか?

持分を買い取った第三者も共有者としての権利を持つことになるため、理論上は新しい共有者との間で共有物分割請求等の手続きが行われる可能性があります。持分売却は他の共有者の生活に直接影響しうる行為のため、慎重な判断が必要です。

Q. 相続登記を「相続人申告登記」で済ませた場合も、共有の問題は発生しますか?

相続人申告登記は相続登記の申請義務を簡易に履行するための制度であり、正式な遺産分割・共有関係の確定とは別の話です。遺産分割協議がまとまっていない間は、実質的に相続人全員の共有状態にあると考えられるため、この記事で扱った共有に関するルールと同様の注意が必要です。

まとめ

共有名義の実家は、「全体の売却には全員の同意が必要」「自分の持分だけなら単独で売却できる」という2つのルールを押さえておくと、状況を整理しやすくなります。話し合いがまとまらない場合は共有物分割請求という法律上の手段があり、令和5年からは所在不明の共有者がいる場合の新しい制度も利用できるようになりました。いずれも個別の事情によって最適な進め方は変わるため、実際に動く際は弁護士・司法書士等の専門家にご相談ください。


出典

  1. 民法第206条、第249条、第251条、第252条、第252条の5、第256条、第258条
  2. 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html
  3. 最高裁判所第一小法廷判決 昭和62年4月22日(部分的価格賠償に関する判断)
  4. 最高裁判所第一小法廷判決 平成8年10月31日(全面的価格賠償に関する判断)
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