相続の手続き・登記

相続人に未成年者がいる場合、遺産分割には「特別代理人」が必要になることも

相続人に未成年者がいる場合、遺産分割には「特別代理人」が必要になることも
gonzo
ごんぞう
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親が亡くなり、相続人の中に未成年の子どもがいる場合、親権者が代わりに手続きをすればいいと思われがちですが、実はそう単純にいかないケースがあります。今回は「特別代理人」という制度を整理します。

相続人の中に未成年者がいる場合、遺産分割協議の進め方には特別な注意が必要です。親権者が代わりに手続きをすればよいと考えがちですが、状況によっては家庭裁判所に「特別代理人」の選任を申し立てる必要があります。この記事では、その仕組みを民法の規定に基づいて整理します。

作成日:2026-09-16
更新日:2026-09-16

家族が心配そうに家の模型を見るイメージ

なぜ親権者がそのまま代理できないのか

民法第824条は、親権者が未成年の子の財産に関する法律行為を代理すると定めています。通常であれば、親が未成年の子を代理して手続きを進められます。しかし、民法第826条は、親権者とその子の利益が相反する行為については、親権者は家庭裁判所に子のための特別代理人の選任を請求しなければならないと定めています。

典型的な例が、父親が亡くなり、母親と未成年の子どもが共に相続人になった遺産分割協議です。この場合、母親自身も相続人であり、遺産の取り分について母親と子どもは「一方の取り分が増えれば、他方の取り分が減る」という利益相反の関係にあります。そのため、母親が子どもを代理して遺産分割協議を行うことはできず、子どものために特別代理人を選任してもらう必要があります。

出典:民法第824条、第826条

利益相反かどうかは「外形」で判断される

ここで重要なのは、利益相反に該当するかどうかは、親権者の意図や動機ではなく、行為の外形(客観的な内容)から判断されるという点です。「母親は子どものために多くを譲るつもりだった」といった内心の事情は考慮されず、遺産分割協議という行為の性質自体が利益相反にあたるかどうかで判断されます。

  • 相続人が母親1人・未成年の子1人の場合:子のために特別代理人を1人選任する必要がある
  • 相続人が母親1人・未成年の子が複数人いる場合:子ども同士も遺産の取り分をめぐって利益相反の関係になるため、子ども1人ひとりに、それぞれ別の特別代理人を選任する必要がある(同じ人が複数の子の特別代理人を兼ねることはできない)

ここが間違えやすいので注意!

特別代理人を選任せずに親権者が子を代理して行った遺産分割協議は、無効になる可能性があります。すでに手続きを進めてしまった後で無効を指摘されると、相続登記のやり直し等、大きな手戻りが発生しかねません。相続人に未成年者が含まれる場合は、協議を始める前に、特別代理人が必要かどうかを確認することをおすすめします。

特別代理人選任の手続きの流れ

  1. 未成年の子の住所地を管轄する家庭裁判所に、特別代理人選任の申立てを行う
  2. 申立ての際には、遺産分割協議書の案(誰がどの財産を取得する予定かを記した書面)を添付するのが一般的とされる
  3. 家庭裁判所が、申し立てられた候補者(多くの場合、親族や専門家)を特別代理人として選任するかどうかを判断する
  4. 選任された特別代理人が、未成年の子に代わって遺産分割協議に参加する

特別代理人には、必ずしも弁護士等の専門家を選ぶ必要はなく、祖父母や叔父・叔母等の親族を候補者として申し立てることも一般的とされています。ただし、その候補者自身も遺産分割に関して未成年者と利益相反の関係にないことが前提となります。誰を候補者にすればよいか迷う場合は、司法書士や弁護士に相談することをおすすめします。

候補者を選ぶ際によくあるのは、母親側の親族(未成年者の祖父母や叔父・叔母)を候補者とするケースです。母親自身は相続人として遺産分割協議に参加する必要があるため特別代理人にはなれませんが、その親族であれば、遺産分割そのものについて直接の利害関係を持たない限り、候補者になり得ます。ただし、候補者に何らかの事情があり家庭裁判所が不適当と判断した場合は、家庭裁判所が別の候補者を促すこともあるとされています。

選任にかかる期間の目安

特別代理人選任の申立てから選任まで、一般的には1ヶ月前後の期間がかかることが多いとされています。ただし、これは家庭裁判所や事案の内容によって幅があり、遺産分割協議書の案の内容に問題があると判断されれば、補正のやり取りが発生し、さらに時間がかかることもあります。

申立て (協議書案を添付) 家庭裁判所の審査 (内容確認・補正対応) 選任審判 (協議への参加開始) 目安は1ヶ月前後(事案により変動)

図:特別代理人選任の一般的な流れ

相続税の申告期限(相続の開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)や、相続登記の申請期限も念頭に置くと、特別代理人が必要かどうかの判断・申立ては、できるだけ早い段階で行うことが望ましいと考えられます。

家庭裁判所は「法定相続分」を目安に判断する傾向

家庭裁判所が特別代理人選任の申立てを審査する際、添付された遺産分割協議書の案が、未成年の子にとって著しく不利な内容になっていないかを確認するとされています。一般的には、未成年の子の取り分が法定相続分を大きく下回るような内容の場合、選任が認められない、あるいは内容の見直しを求められることがあるとされています。正確な判断基準や具体的な事案での見通しは、申立てを検討する家庭裁判所または弁護士にご確認ください。

遺言書がある場合は必要ない?

ごんぞう
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ここは見落とされがちですが、実は特別代理人が不要になるケースもあります。遺言書の有無で状況が変わるので整理しておきます。

特別代理人が必要になるのは、相続人全員の話し合い(遺産分割協議)が必要な場面です。そのため、被相続人が有効な遺言書を残しており、その遺言の内容どおりに相続手続きを進める場合は、そもそも遺産分割協議自体が不要になり、特別代理人の選任も必要ないと考えられます。

ただし、遺言書に一部の財産しか記載がなく、残りの財産について遺産分割協議が必要になる場合や、相続人全員の合意で遺言と異なる分割を行う場合は、その協議の範囲で特別代理人の選任が必要になることがあります。実家に関する遺言の有無・内容は、相続手続き全体の進め方を左右する重要な要素なので、早い段階で確認しておくことをおすすめします。

相続放棄の場合はどうなる?

未成年の子について相続放棄を検討する場合も、同様に利益相反の問題が生じることがあります。親権者と子が共に相続人で、親権者は相続を承認し、子だけを相続放棄させる場合等は、利益相反にあたるとされ、特別代理人の選任が必要になります。一方で、親権者と子が同時に、同じ内容で相続放棄をする場合は、通常は利益相反にあたらないとされています。いずれのケースに該当するかは個別の事情によって判断が分かれるため、詳しくは家庭裁判所または弁護士にご確認ください。相続放棄そのものの仕組みは実家じまいで相続放棄を検討したら、まず知っておきたいことで整理しています。

代襲相続で孫が未成年者になるケース

実家じまいの現場では、祖父母が亡くなる前に、その子(親)がすでに亡くなっており、孫が代襲相続人になるというケースも珍しくありません。孫がまだ未成年である場合、その親権者(多くは配偶者を亡くした親)が代わりに手続きを行うことになりますが、その親権者自身も相続人であれば、ここでも同じ利益相反の問題が生じます。

また、代襲相続では相続人の構成が複雑になりやすく、未成年者が複数の代襲相続人にまたがって含まれる場合、それぞれに別の特別代理人が必要になる点にも注意が必要です。祖父母の実家じまいを進める際は、相続人の中に孫世代の未成年者が含まれていないか、早めに確認しておくことをおすすめします。

木製人形の三世代家族と家のイメージ

実家じまいとの関わり

実家じまいの相続人に未成年者が含まれる場合、特別代理人の選任手続きには一定の時間がかかるため、相続登記や相続税申告の期限を意識しながら、早めに家庭裁判所への申立てを進める必要があります。相続登記の期限については相続登記の義務化とは?、実家じまい全体の手続きスケジュールは実家じまいの手続き、期限が近い順に一覧もあわせてご確認ください。

よくある質問

Q. 未成年者が18歳・19歳の場合も特別代理人は必要ですか?

民法上の成年年齢は18歳です(2022年4月施行)。18歳以上の相続人は成年として扱われるため、自分自身で遺産分割協議に参加でき、特別代理人は不要です。特別代理人が問題になるのは、相続人が18歳未満の場合です。

Q. 特別代理人の選任には費用がかかりますか?

家庭裁判所への申立てには収入印紙代等の実費がかかります。弁護士・司法書士に手続きを依頼する場合は、別途専門家への報酬が発生します。具体的な金額は依頼先によって異なるため、個別に確認してください。

Q. 特別代理人は、遺産分割協議が終わった後もその役割を続けますか?

特別代理人の権限は、選任の目的となった特定の行為(その遺産分割協議)に限定されるのが一般的とされています。その行為が終われば、特別代理人としての役割も終了します。

Q. 未成年後見人がすでに選任されている場合も、別途特別代理人が必要ですか?

未成年後見人も、親権者と同様に、未成年者との間で利益相反となる行為については代理できないとされています。未成年後見人自身が相続人ではない場合は特別代理人が不要なこともありますが、後見人自身も相続人である等、利益相反の関係にある場合は、やはり特別代理人の選任が必要になると考えられます。個別の状況は家庭裁判所または弁護士にご確認ください。

Q. 特別代理人の候補者が見つかりません。どうすればいいですか?

適当な親族が見つからない場合、弁護士や司法書士等の専門家を候補者として申し立てることもできるとされています。候補者選びに迷う場合は、家庭裁判所の窓口や弁護士に相談することをおすすめします。

まとめ

項目内容
必要になる場面親権者と未成年の子が共に相続人で、遺産分割協議を行う場合
根拠民法第824条・第826条(利益相反行為の代理禁止)
判断基準行為の外形で判断。内心の意図は考慮されない
選任までの目安1ヶ月前後(事案により変動)
不要になるケース有効な遺言どおりに手続きを進める場合等

相続人に未成年者が含まれ、親権者自身も相続人である場合は、利益相反を避けるために家庭裁判所への特別代理人選任の申立てが必要になります。この手続きを踏まずに行った遺産分割協議は無効になるおそれがあるため、該当する可能性がある場合は、早い段階で家庭裁判所または弁護士・司法書士に相談することをおすすめします。


出典

  1. 民法第824条、第826条
  2. 民法第4条(成年年齢、2022年4月1日施行)
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