名古屋市の老朽危険空家等除却費補助金|評価点数75点以上で対象に、最大80万円の解体補助を整理

名古屋市には「老朽危険空家等除却費補助金」という、実家の解体費用を補助する制度があります。特徴的なのは、建物の危険度を基礎・柱・外壁・屋根の4項目で点数化し、合計75点以上でなければ対象にならないという評価の仕組みです。今日は、この点数の付き方から補助率、手続きの流れまで、名古屋市の交付要綱に沿って詳しく整理します。
実家が名古屋市内にあり、老朽化して空き家になっている場合、市の「老朽危険空家等除却費補助金」を使えれば、解体費用の一部が補助されます。この制度で特徴的なのは、建物の危険度を「基礎」「柱・梁」「外壁」「屋根」の4項目で点数化し、合計75点以上でなければ補助の対象にならないという評価の仕組みです。点数が高いほど補助率も上がり、125点以上になると補助率は3分の2(上限80万円)まで引き上げられます。この記事では、名古屋市が公表している交付要綱をもとに、評価の中身、補助率、対象者の要件、申請の流れを整理します。
作成日:2026-09-30
更新日:2026-09-30
制度の概要
「名古屋市老朽危険空家等除却費補助金」は、空家等対策の推進に関する特別措置法上の「特定空家等」に該当するおそれのある老朽化した空き家について、除却(解体)にかかる費用の一部を市が補助する制度です。対象になるのは、腐朽・破損が著しく、周辺に保安上の危険を及ぼすおそれのある家屋(付属物を含む)で、後述する評価基準で一定の点数以上と判定されたものです。
人口約230万人を抱える政令指定都市である名古屋市にも、他の地方都市と同じように、相続をきっかけに空き家となった老朽住宅が点在しています。特に、区画整理が進む前からの古い住宅地や、駅から離れた住宅街では、代替わりのタイミングで空き家化が進みやすいとされています。こうした背景のもと、名古屋市は独自の評価基準を設けて、危険度の高い建物を優先的に除却へと導く仕組みを運用しています。単に「古い」というだけでなく、実際にどの部位がどの程度傷んでいるかを点数で可視化するという発想は、他の自治体の「不良度判定」や「危険度判定」とも共通する部分がありますが、名古屋市の場合は4項目の配点表が公開されている点で、外部から見ても評価の考え方がつかみやすくなっています。
出典:名古屋市「老朽危険空家等除却費補助金」(https://www.city.nagoya.jp/bousai/anzen/1034530/1014550/1034531/1014557.html)、名古屋市老朽危険空家等除却費補助金交付要綱

補助率:評価点数で3分の1か3分の2かが決まる
名古屋市の制度で特徴的なのは、評価点数の水準によって補助率そのものが2段階に分かれている点です。
| 評価点数 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 75点以上125点未満 | 除却費の3分の1 | 40万円 |
| 125点以上 | 除却費の3分の2 | 80万円 |
補助対象経費は、国土交通大臣が定める標準建設費等をもとにした除却工事費が上限とされ、消費税は仕入税額控除の対象になる場合は含まれません。補助金額は千円未満を切り捨てて計算します。同じ「老朽危険空家」でも、危険度が高いと判定されるほど、補助率・上限額の両方が引き上げられるという設計です。次の章で、この評価点数がどのように付けられるのかを詳しく見ていきます。
評価点数の付け方(4項目・合計75点以上)
評価は、交付要綱の別表に基づき、「基礎」「柱・梁」「外壁」「屋根」の4項目それぞれについて、該当する状態の点数を1つずつ選び、その合計点で判定します。市の職員が現地調査を行い、実際の建物の状態を確認したうえで点数を付けます。
| 評価項目 | 状態 | 点数 |
|---|---|---|
| 基礎 | 基礎なし | 20点 |
| 玉石基礎 | 10点 | |
| 柱・梁 | 崩壊の危険(傾斜1/20以上) | 100点 |
| 数箇所腐朽破損(傾斜1/60以上) | 50点 | |
| 柱の腐朽破損 | 25点 | |
| 外壁 | 下地露出・貫通穴 | 25点 |
| 下地露出 | 15点 | |
| 屋根 | 崩落・大穴 | 50点 |
| 著しい剥落 | 25点 | |
| 一部剥落 | 15点 |
図:評価点数の内訳イメージ(名古屋市の交付要綱をもとに作成、実際は4項目から1つずつ選んで合計)
たとえば、柱・梁に「崩壊の危険(傾斜1/20以上)」の100点が付くほど深刻な状態であれば、それだけで75点のラインを超えます。一方、各項目が軽微な状態にとどまる場合は、合計しても75点に届かず、補助の対象外と判定される可能性がある点に注意が必要です。なお、空家等対策の推進に関する特別措置法第14条第3項の措置命令を受けた物件や、故意に破損させた物件は、この制度の対象から除外されています。
ここで注意したいのは、4項目それぞれについて「該当する状態を1つ選ぶ」という評価方法であるため、部位ごとに複数の劣化が同時に見られても、その部位の点数としては最も重い1つの状態が採用される、という考え方になっている点です。たとえば外壁に「下地露出・貫通穴」(25点)と「下地露出」(15点)の両方に近い状態が混在している場合でも、外壁の項目としては、より重い25点が採用されると考えられます。実際にどちらの状態と判定されるかは、現地調査を行う市職員の目視確認によります。
そもそも「特定空家等」とは
この制度が前提としている「特定空家等」とは、空家等対策の推進に関する特別措置法で定められた区分で、①倒壊等著しく保安上危険となるおそれのある状態、②適切な管理が行われず衛生上有害となるおそれのある状態、③適切な管理が行われず著しく景観を損なっている状態、④その他周辺の生活環境の保全を図るために放置することが不適切な状態、のいずれかに該当する空き家を指します。特定空家等に認定されると、自治体から助言・指導、勧告、命令へと段階的に対応が強まり、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例が外れる扱いになります。全国的な指導・勧告・命令の実施状況は特定空家等への指導・勧告・命令、累計41,476件にで紹介しています。名古屋市の除却補助金は、こうした特定空家等(またはそれに該当するおそれのある状態)の建物を対象に、危険な状態が悪化する前に自主的な解体を後押しする位置づけの制度と言えます。
対象者と対象外になる人

申請できるのは、対象となる老朽危険空家等の所有者、またはその同意を得て除却事業を行う個人です。法人は対象になりません。相続した実家の名義が亡くなった親のままになっている場合でも、相続人であれば所有者として申請できる余地がありますが、相続人が複数いる場合は、所有者全員の同意が必要とされています。
次の条件をすべて満たす必要があります。
- 所有者(複数いる場合は全員)の同意があること
- 市税を滞納していないこと
- 名古屋市暴力団排除条例に定める暴力団員等に該当しないこと
一方、次の場合は対象外です。
また、要綱では、完了実績報告の期限(完了後20日以内または年度2月末日のいずれか早い日)を守らなかった場合、交付決定そのものが取り消され、すでに受け取った補助金の返還を求められることが明記されています。工期が延びそうな事情がある場合は、期限ぎりぎりになってから相談するのではなく、早い段階で市の担当窓口に状況を伝えておくことが望ましいと考えられます。あわせて、除却後の空き地についても、補助事業者自身が適切に管理する責務を負うことが要綱に明記されています。更地にした後の雑草管理や、境界の維持なども、解体して終わりではなく続く作業として意識しておく必要があります。
- すでに他の公的な補助制度を利用している場合
- 宅地建物取引業者等が業として行う除却である場合
- 交付決定を受ける前に工事に着手した場合
ここが間違えやすいので注意!
名古屋市のページには、行政書士でない者が報酬を得て申請書類の作成を代行すると、行政書士法違反になる旨の注意喚起があります。解体業者等から「書類作成も代行します」と持ちかけられても、報酬を伴う代筆は資格を持つ専門家でなければ行えない点に留意してください。
受付方法と令和8年度の状況
名古屋市の制度は、他の自治体でよく見られる「〇月〇日から〇月〇日まで」という期間限定の受付ではなく、通年で先着順に受け付け、予算額に達し次第終了する方式です。令和8年度(2026年度)の予算総額や、実際の受付終了時期は、市の公表ページからは確認できませんでした。申請を検討する場合は、事前にスポーツ市民局地域振興部(電話:052-972-3126)へ、現時点で受付可能かどうかを問い合わせることをおすすめします。
交付決定を受けた場合、工事は交付決定を受けた年度の2月末日までに完了させる必要があります。年度末が近い時期に申請すると、工期に余裕がなくなる可能性があるため、早めの相談が望ましいと考えられます。
先着順・予算枠制の制度に共通する傾向として、年度の前半に申請が集中しやすく、年度後半になるほど予算の残額が少なくなっていくことが考えられます。名古屋市が具体的な予算総額を公表していない以上、「今から相談してもまだ間に合うか」を判断する材料は、市への直接の問い合わせに頼らざるを得ません。実家の解体を具体的に検討し始めた段階で、見積り取得と並行して、早めに窓口へ連絡しておくことをおすすめします。
申請から補助金交付までの流れ(8ステップ)
名古屋市の交付要綱に基づく手続きの流れは、次のとおりです。
図:名古屋市老朽危険空家等除却費補助金の手続きの流れ(交付要綱をもとに作成)
この制度でも、交付決定(④)より前に工事を契約・着手すると補助の対象外になるという、多くの自治体に共通するルールが徹底されています。事前相談の段階で市職員が現地確認を行い、評価点数の見込みを把握できるため、見積りを取る前後のタイミングで早めに市へ相談することをおすすめします。
必要書類
交付要綱第7条に基づき、交付申請時に必要とされる主な書類は次のとおりです。
- 交付申請書(様式第1号)
- 事業計画書(様式第1号の2)
- 登記事項証明書または固定資産税評価額証明書等(申請日から3か月以内のもの)
- 対象建物の位置図
- 劣化・破損状況が分かる写真
- 見積書(原本証明付き)
- 市税を滞納していないことの証明
- 所有者全員の同意書(該当する場合)
- 所有者以外の権利者の同意書(該当する場合)
完了実績報告の際には、領収書等の写し、二方向以上から撮影した完了後(更地)の写真、廃棄物の適正処理を証明する書類が必要です。登記事項証明書・固定資産税評価額証明書は「申請日から3か月以内」という有効期限が定められているため、取得のタイミングにも注意してください。
対象経費・対象外経費
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象になる経費 | 建物の除却工事費(廃棄物の運搬・処分費を含む) |
| 補助対象外の経費 | 地中埋設物の撤去費用 |
解体工事の見積もりの中に、古い浄化槽や井戸等の地中埋設物の撤去費用が含まれている場合、その部分は補助対象経費から除かれる点に注意してください。見積書を確認する際は、建物本体の除却費と、地中埋設物の撤去費が項目として分かれているかを確認しておくと、実際の補助額を見通しやすくなります。
また、補助対象経費の金額そのものにも上限があります。補助対象経費は、実際の見積額と、国土交通大臣が定める標準建設費等をもとにした金額とを比べて、低いほうの金額が採用される仕組みです。つまり、見積額がどれだけ高くても、標準建設費等を超える部分は補助の計算に含まれません。逆に、相場より安い見積りを取れた場合は、その実際の金額が基準になります。実家の解体費用のおおよその相場感を先につかんでおきたい場合は、解体費用かんたんシミュレーターで構造・延床面積から概算を確認しておくと、見積書の妥当性を判断しやすくなります。
他の自治体の制度と比べてみる
当サイトで紹介してきた他の自治体の解体補助制度と、名古屋市の制度を比べると、次のようになります。
| 項目 | 名古屋市 | 愛媛県松山市 | 東京都北区 |
|---|---|---|---|
| 補助率 | 評価点数により1/3〜2/3 | 5分の4 | 自治体ページ参照 |
| 上限額 | 40万円または80万円 | 100万円(島しょ部160万円) | 自治体ページ参照 |
| 対象判定の方法 | 4項目×点数の合計(75点以上) | 不良度判定100点以上 | 老朽度判定 |
| 受付方式 | 通年・先着順で予算枠まで | 期を分けた募集枠制 | 期間限定の募集 |
この比較から分かるように、補助率・上限額だけでなく、「危険度をどう判定するか」「いつ受付をするか」も自治体ごとに大きく異なります。松山市の制度は松山市の老朽危険空家除却補助金、東京都北区の制度は東京都北区の空き家解体補助金で詳しく紹介しています。実家のある自治体の制度がどの方式に近いか、公式ページで確認してみてください。
特に、名古屋市のように評価点数を細かく公開している自治体は、実は多くありません。多くの自治体では「不良度判定〇〇点以上」「特定空家等に該当」といった要件は示されていても、具体的な配点表までは公表されていないことがあります。名古屋市の場合は、基礎・柱梁・外壁・屋根という4つの部位ごとに、どのような状態がどれだけの点数になるかが明文化されているため、事前に自分の実家がどの程度の状態にあるかを、ある程度の目安として確認しやすいという利点があります。ただし、最終的な評価は市職員による現地調査で決まるため、あくまで参考情報として捉えてください。
実家じまいとの関わり
名古屋市に実家があり、老朽化した空き家の解体を検討している場合、次の3点を押さえておくとよいでしょう。
- 点数評価は自分では確定できない:75点以上かどうかは市職員の現地調査で決まります。まずは事前相談から始めることになります
- 相続人全員の同意が前提:相続登記が未了でも、所有者(相続人)全員の同意があれば申請の余地があります
- 先着順・予算枠に達し次第終了:期間限定ではありませんが、予算がなくなれば受付が止まります。早めの相談が安全です
解体後は固定資産税の住宅用地特例が外れ、税額が上がる場合があります。解体すると補助金はもらえるが固定資産税は上がる?もあわせてご確認ください。また、ご自身の建物でおおよその解体費用感を先に把握したい場合は解体費用かんたんシミュレーターをご活用ください。相続人が複数いて意見がまとまらない場合は共有名義の実家、一人が反対したら売れない?も参考になります。
よくある質問
Q. 評価点数は自分で計算できますか?
公表されている配点表を参考に、おおよその見当をつけることはできますが、正式な評価は市職員による現地調査で決定されます。自己判断だけで「対象になる/ならない」を決めず、事前相談で確認することをおすすめします。
Q. 令和8年度は、いつまで申請できますか?
この制度は通年の先着順受付で、予算額に達し次第終了します。具体的な受付状況は公式ページからは確認できないため、スポーツ市民局地域振興部(052-972-3126)へお問い合わせください。
Q. 75点に届かなかった場合、他に使える制度はありますか?
この補助金の対象要件を満たさない場合でも、他の解体・改修に関する国の補助制度(長期優良住宅化リフォーム推進事業等)が利用できる可能性があります。長期優良住宅化リフォーム推進事業とは?もあわせてご確認ください。
Q. 完了報告の期限に間に合わなさそうな場合はどうすればいいですか?
期限(完了後20日以内または年度2月末日のいずれか早い日)を守れないと、交付決定の取消や補助金の返還を求められる可能性があります。工期の遅れが見込まれる場合は、早めに市の担当窓口に相談することをおすすめします。
Q. 地中に古い浄化槽が埋まっているのですが、その撤去費用は補助されますか?
地中埋設物の撤去費用は、この制度の補助対象外とされています。建物本体の除却工事費とは別に自己負担が必要になる点を、見積もりの段階で確認しておくことをおすすめします。
Q. 解体業者から「申請書類も代わりに作成します」と言われました。頼んでもいいですか?
名古屋市の案内では、行政書士でない者が報酬を得て申請書類の作成を代行することは、行政書士法違反になるとされています。書類作成の代行を有償で依頼したい場合は、行政書士等の資格を持つ専門家に相談してください。当サイトは特定の業者・専門家へのご紹介や送客は行っておりません。
Q. 評価点数が75点ちょうどの場合、補助率はどちらになりますか?
要綱の区分は「75点以上125点未満」と「125点以上」なので、75点であれば3分の1(上限40万円)の区分に該当します。125点に到達して初めて3分の2(上限80万円)の区分に切り替わります。
Q. 解体後の土地はどうすればいいですか?
要綱では、除却後の跡地についても、補助事業者が適切に管理する責務を負うとされています。更地のまま放置して雑草が繁茂すると、近隣とのトラブルにつながることもあります。売却・活用の選択肢に迷う場合は空き家、売る・貸す・解体で迷っている方へも参考にしてください。
Q. 名古屋市外に住んでいても申請できますか?
申請できるかどうかは、申請者の居住地ではなく、対象となる建物が名古屋市内にあるかどうかで決まります。相続人が市外や県外に住んでいても、名古屋市内にある実家が対象要件を満たせば、所有者として申請することができると考えられます。ただし、申請窓口とのやり取りや現地立会いが必要になる場面もあるため、遠方に住んでいる場合は、スケジュールに余裕を持って進めることをおすすめします。
Q. マンションの一室は対象になりますか?
この制度は、老朽危険空家等(戸建て住宅等)の除却を対象としており、区分所有の集合住宅の一室のみを対象とするものではないと考えられます。マンションの管理・処分については、区分所有法に基づく別の枠組みで検討する必要があります。詳しくは名古屋市の窓口にご確認ください。
まとめ
名古屋市の老朽危険空家等除却費補助金は、基礎・柱梁・外壁・屋根の4項目を点数化し、合計75点以上で対象、125点以上で補助率が3分の2に上がるという、点数評価に基づく独自の仕組みを持つ制度です。上限額は40万円または80万円で、地中埋設物の撤去費用は対象外になる点にも注意が必要です。受付は通年の先着順・予算枠制のため、老朽化した実家の解体を検討している場合は、早めに市の窓口へ事前相談することをおすすめします。
相続した実家が名古屋市内にあり、老朽化が進んでいる場合、まずは評価点数の見込みを把握するところから始めることになります。所有者が複数いる場合は、解体の方針について家族間で早めに合意しておくと、その後の交付申請もスムーズに進みやすくなります。制度の詳細や最新の受付状況は、必ず名古屋市の公式ページでご確認ください。