相続の手続き・登記

山や畑も実家と一緒に相続?森林の土地は90日以内に届出が必要です

山や畑も実家と一緒に相続?森林の土地は90日以内に届出が必要です
gonzo
ごんぞう
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実家じまいというと、家屋と宅地のことばかり考えがちですが、実家の裏山や、田舎によくある「山を少し持っている」というケースを見落としていませんか?森林の土地を相続すると、実は相続登記とは別に、90日以内に届出をしなければならない制度があります。今日はこの見落としがちな制度を整理します。

実家じまいというと、住んでいた家屋や宅地の相続・処分に注目が集まりがちですが、地方の実家では、宅地に隣接する山林や、離れた場所に小さな山を所有しているケースも珍しくありません。林野庁は「森林の土地の所有者届出制度」として、相続等によって森林の土地を取得した場合、取得を知った日から90日以内に、市町村長への届出が必要であることを周知しています。この制度は相続登記の義務化とは別の制度であり、面積の制限がなく、登記の有無にかかわらず届出義務が生じるという点で、見落とされやすい手続きです。

作成日:2026-09-29
更新日:2026-09-29

制度の概要

「森林の土地の所有者届出制度」は、森林法に基づき、相続・売買・贈与等によって森林の土地の所有者となった人に対し、土地の所在する市町村長への届出を義務づける制度です。都道府県ではなく、林野庁が所管する森林法上の制度である点が特徴で、宅地や農地とは異なる独自の届出ルートが定められています。

出典:林野庁「森林の土地の所有者届出制度」(https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/todokede/)

高齢の夫婦が担当者と相談している様子

なぜこの制度ができたのか

この制度の背景には、全国的に「所有者が分からない、あるいは連絡がつかない森林」が増えているという問題があります。山林は宅地に比べて相続時に見落とされやすく、相続登記が行われないまま世代を重ねて所有者が分からなくなってしまうケースが少なくありません。所有者が不明な森林が増えると、間伐等の適切な管理や、災害時の対応、境界の確認等に支障が出ることが懸念されています。

そこで、登記の有無にかかわらず、まず「誰が所有者になったか」だけでも市町村が把握できるようにするため、比較的簡易な届出制度として設けられているのがこの制度です。登記のような専門的な手続きと違い、届出自体は所有者本人が比較的簡単な書類で行うことができます。

この制度は平成24年の森林法改正で導入されたもので、決して最近できたばかりの新しい制度ではありません。しかし、宅地や建物の相続手続きに比べて、山林の相続は関心が向きにくく、そもそもこの制度の存在自体を知らないまま期限を過ぎてしまう相続人が少なくないと考えられます。実家じまいを機に、これまで意識していなかった森林の土地の存在にはじめて気づいた、というケースも十分にあり得ます。

相続登記の義務化との違い

当サイトでも紹介している相続登記の義務化と、この森林の土地の届出制度は、名前や場面が似ているため混同されやすいのですが、まったく別の制度です。両者の違いを整理すると、次のようになります。

項目相続登記(不動産登記法)森林の土地の所有者届出(森林法)
対象すべての不動産(土地・建物)森林の土地(地目を問わない)
期限相続の開始・取得を知った日から3年以内取得を知った日から90日以内
提出先法務局市町村長
面積要件なしなし(1㎡でも対象)
罰則正当な理由なく怠ると10万円以下の過料正当な理由なく怠ると10万円以下の過料

特に注意したいのが、期限の違い(相続登記は3年、森林の届出は90日)です。相続登記の期限を意識するあまり、それより大幅に短い森林の届出の期限を過ぎてしまう、というケースが起こりやすいと考えられます。また、この届出は「登記」ではないため、届出をしただけでは所有権の登記が完了したことにはならず、相続登記は別途行う必要がある点にも注意が必要です。

相続発生からの期限の違い 相続開始 90日 森林の土地届出 (市町村長へ) 3年 相続登記 (法務局へ) 森林の届出のほうが、相続登記より 大幅に短い期限が設定されている

図:森林の土地の届出(90日)と相続登記(3年)の期限の違い

届出の対象・期限・提出先

実家の外観イメージ

届出の対象となるのは、相続・遺贈・売買・贈与等によって森林の土地の所有者となったすべての人です。面積の下限は設けられておらず、たとえわずかな面積の山林であっても届出の対象になります。地目が「山林」でなくても、実際の土地の状況が森林であれば対象になり得るとされているため、地目だけで判断せず、実際の土地の状況を確認することが大切です。

届出書は、土地が所在する市町村の窓口(林務担当課等)に提出します。届出書には、新しい所有者の住所・氏名、土地の所在・地番、取得の原因(相続等)や取得年月日等を記載するのが一般的です。相続の場合、遺産分割協議が終わっていない段階でも、法定相続分に応じて所有者となった時点で届出義務が生じると解されているため、「まだ遺産分割協議中だから」という理由で届出を先延ばしにしないよう注意が必要です。

届出に添付する書類の目安

届出の際には、届出書に加えて、取得の事実を確認できる書類の添付を求められるのが一般的です。相続の場合であれば、登記事項証明書(相続登記が完了している場合)や、遺産分割協議書の写し、戸籍謄本等が該当します。まだ相続登記が完了していない段階でも、相続人であることや、対象の土地を取得したことが分かる書類があれば届出は可能とされていますが、必要書類の具体的な範囲は市町村によって運用が異なる場合があるため、事前に窓口へ確認しておくとスムーズです。

また、届出の対象となる森林の位置を示すために、公図の写しや森林簿の写し等、土地の場所を特定できる資料の添付を求められることもあります。実家の相続に伴って山林の存在に気づいた場合、まずは固定資産税の課税明細書に記載された地番をもとに、法務局で登記事項証明書や公図を取得するところから始めるとよいでしょう。

令和8年4月からの様式改正

林野庁の案内によると、令和8年4月1日から、届出書の様式が改正され、所有者の国籍等の記載が新たに義務化されました。これは、森林の土地の所有状況をより正確に把握する取り組みの一環とされており、改正前の旧様式は、令和8年4月1日以降は受理されなくなっています。

これから届出を行う場合は、市町村の窓口や林野庁のウェブサイトで、最新の様式を確認したうえで提出することが必要です。以前にダウンロードして保存していた様式を使い回してしまうと、旧様式として受理されない可能性があるため注意してください。

届出をしないとどうなるか

森林法では、正当な理由がなく届出を怠った場合、10万円以下の過料の対象となる旨が定められています。相続登記の未了に対する過料と同水準であり、罰則の重さという意味では突出したものではありませんが、「知らなかった」では済まされない法的な義務であることに変わりはありません。

ここが間違えやすいので注意!

「相続登記さえしておけば大丈夫」と思い込んでしまうのが、この制度の一番の落とし穴です。相続登記と森林の土地の届出は別々の手続きであり、それぞれ別の期限・提出先が定められています。実家の相続手続きを進める際は、森林や山林に該当する土地がないか、登記事項証明書や固定資産税の課税明細で改めて確認しておくことをおすすめします。

実家じまいとの関わり

地方の実家には、宅地に隣接する裏山や、離れた場所にある小さな山林が、代々の相続を経て所有財産に含まれているケースが少なくありません。実家じまいを進める中で、こうした森林の土地の存在に気づいたら、相続登記の準備と並行して、90日以内の届出も忘れずに行うことが必要です。相続財産の全体像を把握する際は、固定資産税の課税明細書に山林の記載がないか、必ず確認してみてください。相続手続き全体の期限については実家じまいの手続き、期限が近い順に一覧もあわせてご覧ください。なお、山林を将来どうするか(売却・寄付・そのまま保有等)の判断は個別性が高いため、森林組合や地元の専門家にご相談ください。当サイトは特定の業者・専門家へのご紹介や送客は行っておりません。

山林は宅地に比べて売却や活用の難易度が高く、「相続はしたが結局何もできていない」という状態が長く続きやすい財産でもあります。境界が曖昧なまま放置されている山林も多く、将来的に売却や境界確定が必要になった際に、想定以上の手間がかかることもあります。少なくとも「誰が所有しているか」を明確にしておく届出と、相続登記だけは、活用方針が決まるかどうかにかかわらず先に済ませておくことをおすすめします。

よくある質問

Q. 自分の土地に森林が含まれているかどうか、どう確認すればいいですか?

固定資産税の課税明細書に「山林」等の地目が記載されている場合はすぐに分かりますが、地目が「宅地」等であっても実際には森林の状態になっている土地が対象になることもあります。判断に迷う場合は、土地の所在する市町村の林務担当課に相談することをおすすめします。

Q. 相続人が複数いて、まだ遺産分割協議が終わっていません。それでも届出は必要ですか?

遺産分割協議が終わっていなくても、相続の開始によって法定相続分に応じた共有状態が生じた時点で、届出義務が発生すると解されています。協議がまとまるのを待たず、まずは届出だけでも期限内に済ませておくことをおすすめします。具体的な記載方法は市町村の窓口にご確認ください。

Q. 届出をすると、何か費用がかかりますか?

届出自体に手数料はかからないとされています。登記のように登録免許税等の税負担も発生しないため、相続登記と比べると金銭的な負担は小さい手続きです。

Q. 山を相続しても、特に活用する予定がありません。それでも届出は必要ですか?

活用の予定の有無にかかわらず、所有者となった事実に基づいて届出義務が生じます。「使う予定がないから放っておく」という判断は、届出義務そのものを免除するものではない点に注意してください。

Q. 相続放棄をすれば、この届出も不要になりますか?

相続放棄が認められれば、その山林を含めて相続財産を一切引き継がないことになるため、所有者にはならず、届出義務も発生しないと考えられます。ただし、相続放棄は山林だけを選んで放棄することはできず、他の不動産・預貯金等すべての相続財産を放棄することになる点に注意が必要です。相続放棄を検討する場合は、期限(相続の開始を知った時から原則3ヶ月以内)も含めて司法書士・弁護士にご相談ください。

Q. すでに90日の期限を過ぎてしまいました。今からでも届出したほうがいいですか?

期限を過ぎてしまった場合でも、届出をしないまま放置するよりは、気づいた時点で速やかに届出を行うことをおすすめします。届出が遅れたこと自体について過料の対象となるかどうかは個別の事情によりますが、いずれにしても、届出義務がなくなるわけではありません。対応方法については、土地の所在する市町村の窓口にご相談ください。

まとめ

森林の土地の所有者届出制度は、相続登記とは別に、取得後90日以内に市町村長への届出を求める、見落とされやすい制度です。面積の制限がなく、登記の有無にかかわらず義務が生じるため、実家に付随する裏山や、遠方に残る小さな山林も対象になり得ます。相続手続きを進める際は、宅地や建物だけでなく、固定資産税の課税明細等を改めて確認し、森林の土地が含まれていないかチェックしてみることをおすすめします。令和8年4月からは届出様式も改正されているため、これから届出を行う場合は最新の様式を確認してください。


出典

  1. 林野庁「森林の土地の所有者届出制度」https://www.rinya.maff.go.jp/j/keikaku/todokede/
  2. 森林法(土地所有者届出制度及び罰則に関する規定)
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