佐世保市の空き家解体補助金|希望者多数なら市が選定、令和8年度の受付は終了済み

長崎県佐世保市の空き家解体補助金は、令和8年度の事前相談受付がすでに終了しています。しかも、この制度は先着順ではなく、希望者が多い場合は市が老朽度等をもとに対象者を選ぶ「選定制」という珍しい仕組みです。今日は、佐世保市の制度を例に、申請の流れと、他市にはあまり見られない特徴を整理します。
長崎県佐世保市には、「老朽危険空き家及び空き建築物除却費補助金」という制度があります。他の多くの自治体が先着順や期間内の受付で運用しているのに対し、佐世保市は事前相談・現地調査を経て、希望者が多い場合は老朽度や周辺への影響度をもとに市が対象者を選定するという、やや珍しい仕組みを採用しています。この記事では、佐世保市の公表資料をもとに、補助率、対象要件、選定の考え方、申請の流れを整理します。なお、令和8年度の事前相談受付はすでに終了しています。この記事は、制度の仕組みを理解するための事例として、また来年度以降の申請に備えるための参考としてご覧ください。
作成日:2026-09-27
更新日:2026-09-27
制度の概要
「老朽危険空き家及び空き建築物除却費補助金」は、長崎県佐世保市が運用する、老朽化した空き家・空き建築物の解体費用を補助する制度です。人口約22万人の佐世保市は、旧海軍の軍港都市として発展した経緯から、急傾斜地に古い木造住宅が密集する地域が多く、老朽化した空き家の管理が地域課題になりやすい地理的特徴があるとされています。この補助金には、国の交付金も充当されており、国による検査の対象になることが公式資料に明記されている点も特徴です。
国費が充当されている制度では、交付を受けた後、国の会計検査院等による検査で使途が不適切と判断された場合、補助金の返還を求められることがあるとされています。佐世保市の公式資料には、この点が他の自治体よりも踏み込んだ形で明記されており、税金を原資とする補助金である以上、交付要件を満たした使い方をすることの重要性が強調されています。老朽危険空き家の解体だけでなく、この制度は「住宅以外の空き建築物」も対象に含めている点で、単なる住宅解体の補助にとどまらない、やや広めの制度設計になっていることも特徴の一つです。
出典:佐世保市「老朽危険空き家及び空き建築物除却費補助金」(https://www.city.sasebo.lg.jp/tosiseibi/jyutak/rokyu.html)、令和8年度事業概要パンフレット

補助率:住宅と住宅以外で異なる
補助率と上限額は、対象が「住宅」か「住宅以外(空き建築物)」かによって分かれています。
| 区分 | 補助率 | 上限額 |
|---|---|---|
| 住宅(通常) | 対象工事費の40% | 60万円 |
| 住宅(市街化区域内・重機解体が困難と市が認めた場合) | 対象工事費の40% | 100万円 |
| 住宅以外(空き建築物) | 対象工事費の3分の1 | 60万円 |
「重機が入れず手作業に近い解体になる」と市職員が認めた場合に、住宅の上限額が60万円から100万円に引き上げられるという規定は、佐世保市特有の地形(急傾斜地、狭い路地)を反映したものと考えられます。また、もともと住宅だった建物でも、空き家になる前の用途が倉庫や店舗等だった場合は、補助率が3分の1(住宅以外の扱い)になる点にも注意が必要です。実家が過去に店舗や事務所として使われていた時期がある場合は、この点を市に確認しておくとよいでしょう。
図:佐世保市の補助率・上限額の区分(公式資料をもとに作成)
対象になる建物の要件
住宅を対象とする場合の要件は、次のとおりです。
- 佐世保市内にあり、現在使用されていないこと
- 木造または鉄骨造であること
- 老朽化し危険な状態にあること(市職員が現地調査で判定)
- 木造の場合は築22年以上であること(鉄骨造は個別に要問合せ)
住宅以外(空き建築物)については、老朽化や自然災害等により建築材料が脱落・飛散し、人の生命・財産に害を及ぼすおそれのある状態であることが要件です。木造住宅の「築22年以上」という年数要件は、減価償却資産の耐用年数(木造住宅は22年)に由来する数字と考えられ、他の自治体でよく見られる「不良度判定〇〇点以上」といった評価点方式とは異なるアプローチです。ただし、築22年を超えているだけでは自動的に対象になるわけではなく、実際に老朽化し危険な状態にあるかどうかを、市職員が現地調査で確認します。
木造住宅の法定耐用年数(減価償却上の耐用年数)が22年とされていることは、税務や不動産の分野では広く知られている数字です。この年数を老朽危険空き家の要件に取り入れている点から、佐世保市の制度は、会計上の減価償却の考え方と、実際の老朽化の判定を組み合わせた基準を採用していると見ることができます。もっとも、実際の建物の傷み方は、立地条件(潮風の影響を受けやすい沿岸部かどうか等)やメンテナンスの状況によって大きく異なるため、築22年を超えているからといって、必ずしも「危険な状態」と判定されるとは限りません。逆に、22年に満たない建物であっても、管理が行き届かず著しく老朽化が進んでいる場合は、他の制度の利用可能性も含めて、市に相談してみる価値はあると考えられます。
対象者の要件

申請できるのは個人に限られ、次のいずれかに該当する人です。
- 対象建物の所有者(登記上または固定資産税上の所有者)
- 所有者の相続人・財産管理人・成年後見人等、処分権限を持つ人
- 上記の同意を得た人(実印・印鑑証明書が必要)
法人は対象外で、市税等の滞納がある人、抵当権者等の同意が得られない人、暴力団員またはこれと密接な関係を有する人も対象になりません。相続人・財産管理人・成年後見人が申請できる旨が明記されているため、相続登記が済んでいない実家であっても、相続人としての立場から申請できる余地があります。ただし、権利関係者の同意には実印と印鑑証明書が必要とされており、相続人が複数いる場合は、あらかじめ合意形成をしておく必要があります。
成年後見人が申請できると明記されている点も、佐世保市の制度の特徴の一つです。親が施設に入居する等して判断能力が低下している場合、実家の解体を進めるには成年後見制度の利用が必要になることがあります。ただし、成年後見人が本人の居住用不動産を処分する場合には、家庭裁判所の許可が別途必要になる点に注意が必要です。この点については成年後見の申立て、年間4.3万件にで詳しく解説しています。実家の名義人本人の判断能力に不安がある場合は、佐世保市への申請を検討する前に、まず成年後見制度の利用が必要かどうかを確認しておくことをおすすめします。
令和8年度のスケジュールと「選定制」という仕組み
令和8年度のスケジュールは、次のとおりです。
| 時期 | 内容 |
|---|---|
| 令和8年4月15日〜5月29日 | 事前相談受付(受付終了済み) |
| 4月下旬〜6月上旬 | 市による現地調査 |
| 〜7月上旬 | 現地調査結果の発表(対象者の選定結果) |
| 〜7月中旬 | 正式な補助金交付申請の締切 |
| 交付決定通知日から60日以内、かつ令和8年12月末まで | 工事完了報告の締切 |
この記事の作成時点(2026年9月)では、令和8年度の事前相談受付(4月15日〜5月29日)はすでに終了しています。これから佐世保市の制度を利用したい場合は、令和9年度以降の受付を待つことになります。例年、4月中旬から5月下旬頃に事前相談を受け付ける傾向がありますが、正確な時期は毎年度の公式発表でご確認ください。
佐世保市の制度で最も特徴的なのが、希望者が多数の場合、老朽度や不特定多数への悪影響の大きさをもとに、市が対象者を選定するという仕組みです。多くの自治体が「先着順」または「期間内であれば受付」という方式を取っているのに対し、佐世保市は事前相談・現地調査の結果をもとに、より緊急性の高い建物から優先的に対象とする、審査選定に近い運用を採用しています。つまり、事前相談の期間内に申し込んでも、必ず対象になれるとは限らない、という点が他の自治体と大きく異なります。
この選定制の背景には、予算に限りがある中で、より緊急性の高い(倒壊等の危険が差し迫った)建物から優先的に対応したいという自治体側の考え方があると推測されます。先着順の制度であれば、たまたま早く申請できた人が優先されますが、選定制の場合は、申請のタイミングよりも建物自体の危険度が重視されることになります。実家の老朽化がそれほど進んでいない段階で事前相談をしても、より危険な状態の建物が優先され、選定から外れる可能性がある、という点は、他の自治体の制度にはあまり見られない特有の事情です。
また、事前相談から現地調査結果の発表まで、約1か月半から2か月程度の期間を要する見込みです。この間、解体業者との見積りのやり取りや、権利関係者との調整を並行して進めておくと、選定結果が出た後の正式な交付申請にスムーズに移行しやすくなります。
申請から入金までの流れ(8ステップ)
図:佐世保市の解体補助金の手続きの流れ(公式フロー図をもとに作成)
佐世保市が公表しているフロー図には、「見積書の宛名」「申請者」「契約主」「領収書の宛名」「口座名義人」がすべて同一人物でなければならないという注意書きがあります。実家の解体では、名義上の所有者と、実際に費用を負担する家族が異なるケースがよくありますが、佐世保市の制度を利用する場合は、この一連の名義をすべて一致させる必要がある点に注意してください。
必要書類
公式資料に明記されている主な書類は、次のとおりです。
- 事前相談・現地調査の段階:解体業者からの見積書
- 正式な交付申請の段階:補助金交付申請書一式、登記事項証明書等の所有権原を示す書類、権利者の同意書(実印・印鑑証明書付き、該当する場合)
- 工事完了報告の段階:領収書の写し、解体後(更地)の写真、その他市が求める書類
個別の様式名までは公式資料からは確認できなかったため、実際の申請書類の詳細は、佐世保市住宅政策課(電話:0956-37-8567または0956-37-6117)にお問い合わせください。
対象経費・対象外経費:付帯物の撤去費は対象外
補助の対象になるのは、建設業許可(土木・建築・解体)または長崎県の解体工事業登録を受けた業者による、建築物全体を除却する工事費です。部分的な解体(一部だけを取り壊す工事)は対象になりません。
| 区分 | 内容 |
|---|---|
| 補助対象になる経費 | 建築物全体の除却工事費(建設業許可または解体工事業登録業者による施工) |
| 補助対象外の経費 | ゴミ・家財道具・草木・門・塀等の解体処分にかかる費用 |
この点は、名古屋市・宇都宮市とは異なる佐世保市独自の特徴です。名古屋市・宇都宮市の制度では、少なくとも建物本体に付随する解体費用(廃棄物処分費等)が対象に含まれる一方、佐世保市では門・塀・庭木といった付帯物の撤去費用が明確に対象外とされています。実家の解体を検討する際は、建物本体の解体費と、塀や庭木の撤去費を分けて見積もりを取り、佐世保市の制度ではどこまでが補助対象になるのかを、事前に確認しておくことをおすすめします。家財・遺品の処分費用についても、この補助金の対象にはならないため、別途実家じまいにかかる費用まとめ等で全体の費用感を把握しておくとよいでしょう。
付帯物の撤去費用が対象外とされている背景には、補助金の趣旨が、あくまで「危険な建築物本体の除去」に限定されているという考え方があると推測されます。塀や庭木は、それ自体が単独で保安上の危険を及ぼすとは考えにくいため、建物本体の除却とは切り離して扱われているのでしょう。実際の解体工事では、建物本体の解体と、塀・庭木の撤去が同時に発注されることが多いため、見積書の段階で、どの項目が「建物の除却工事」に該当し、どの項目が「付帯物の撤去」に該当するのかを明確に分けてもらうことが、後々の補助額の計算をスムーズにするコツと言えます。
他の自治体の制度と比べてみる
これまで当サイトで紹介した自治体の制度と、佐世保市の制度を比較すると、次のようになります。
| 項目 | 佐世保市 | 宇都宮市 | 愛媛県松山市 |
|---|---|---|---|
| 補助率 | 40%(住宅) | 3分の2 | 5分の4 |
| 上限額 | 60万円(条件により100万円) | 70万円 | 100万円(島しょ部160万円) |
| 受付方式 | 事前相談後、選定制 | 期間限定(4〜5月) | 期を分けた募集枠制 |
| 付帯物撤去費 | 対象外 | 記載なし | 対象外 |
佐世保市の「選定制」は、当サイトで紹介してきた自治体の中でも珍しい仕組みです。宇都宮市の制度は宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金、松山市の制度は松山市の老朽危険空家除却補助金で詳しく紹介しています。「補助率が高いから有利」とは一概に言えず、受付方式や選定の仕組みまで含めて、実家のある自治体の制度を確認することが大切です。
実家じまいとの関わり
佐世保市に実家があり、この補助金の利用を検討する場合、次の点を押さえておくとよいでしょう。
- 選定制であることを理解しておく:事前相談をしても、必ず対象になれるとは限りません
- 名義をすべて一致させる:見積書・申請者・契約主・領収書・口座名義人を統一する必要があります
- 付帯物の撤去費は別途見込む:門・塀・庭木の撤去費用は補助対象外です
令和8年度の事前相談受付はすでに終了しているため、これから検討する場合は令和9年度以降の受付を待つことになります。その間に、実家の解体費用のおおよその目安を把握しておきたい場合は解体費用かんたんシミュレーターをご利用ください。相続人が複数いる場合の名義や同意の整理については共有名義の実家、一人が反対したら売れない?も参考になります。
受付終了から次年度の受付開始までの期間は、いわば準備期間として活用できます。登記事項証明書の取得、権利関係者との合意形成、複数の解体業者からの見積り取得といった作業は、正式な受付が始まる前でも進めておくことができます。事前相談の受付が始まってから慌てて準備を始めるよりも、この期間を使って書類や合意形成を整えておくほうが、翌年度の受付開始と同時にスムーズに相談へ進めると考えられます。
よくある質問
Q. 令和8年度の受付は終わってしまいましたか?
令和8年度の事前相談受付(4月15日〜5月29日)は、この記事の作成時点(2026年9月)ですでに終了しています。次の受付時期は、佐世保市の公式ページで発表されるのを確認してください。
Q. 事前相談をすれば、必ず補助を受けられますか?
いいえ。佐世保市の制度は、希望者が多数の場合、市が老朽度や周辺への影響度をもとに対象者を選定する仕組みです。事前相談・現地調査を経ても、選定結果によっては対象にならない場合があります。
Q. 見積書の宛名と、実際に費用を払う人が違う場合はどうすればいいですか?
佐世保市のフロー図では、見積書の宛名・申請者・契約主・領収書の宛名・口座名義人を、すべて同一人物にする必要があるとされています。家族の中で誰が申請者になるかを、早い段階で決めておくことをおすすめします。
Q. 木造で築22年に満たない実家は、対象になりませんか?
木造住宅の要件として「築22年以上」が挙げられているため、これに満たない場合は対象外になると考えられます。鉄骨造の場合の年数要件は個別の問合せが必要とされているため、佐世保市住宅政策課にご確認ください。
Q. 塀や庭木の撤去も一緒に依頼したいのですが、補助されますか?
門・塀・庭木等の解体処分にかかる費用は、この補助金の対象外とされています。建物本体の除却工事費とは別に自己負担が必要になるため、見積もりの段階で項目を分けて確認しておくことをおすすめします。
Q. 空き家ではなく、使われなくなった倉庫や店舗の建物でも対象になりますか?
この制度は「住宅以外の空き建築物」も対象に含めており、老朽化や自然災害等により建築材料が脱落・飛散し、人の生命・財産に害を及ぼすおそれのある状態であれば対象になり得ます。ただし、補助率は住宅(40%)より低い3分の1が適用されます。詳しくは市の窓口にご確認ください。
Q. 国の会計検査で問題があると判断された場合、誰が責任を負うのですか?
公式資料では、国の検査で不適切と判明した場合に返還を求められる旨が明記されていますが、具体的にどのような場合に誰が返還義務を負うかは、個別の状況によります。交付要件を満たした適正な使途であれば通常は問題になりませんが、詳細は佐世保市の担当窓口にご確認ください。
まとめ
佐世保市の老朽危険空き家及び空き建築物除却費補助金は、住宅の場合で工事費の40%(上限60万円、条件により100万円)を補助する制度で、希望者多数の場合は市が老朽度等をもとに対象者を選定するという、他の自治体にはあまり見られない仕組みを持っています。令和8年度の事前相談受付(4月15日〜5月29日)はすでに終了しており、門・塀・庭木等の付帯物撤去費用は補助対象外です。実家が佐世保市内にあり、この制度の利用を検討する場合は、次年度の受付開始時期を早めに確認し、事前相談から動き出すことをおすすめします。
選定制という仕組みは、申請する側にとっては先が読みにくい面がある一方、本当に危険な建物から優先的に対応するという意味では、地域全体の安全確保という観点で理にかなった制度設計とも言えます。実家の老朽化がどの程度進んでいるか自分では判断がつきにくい場合も多いため、まずは事前相談の窓口に連絡し、市職員の目で見てもらうところから始めるのが現実的な進め方です。選定から外れた場合でも、老朽化の進行に応じて翌年度以降に再度申請することは妨げられていないと考えられるため、一度の結果だけであきらめず、実家の状態を継続的に確認していくことが大切です。
出典
- 佐世保市「老朽危険空き家及び空き建築物除却費補助金」https://www.city.sasebo.lg.jp/tosiseibi/jyutak/rokyu.html
- 佐世保市 令和8年度事業概要パンフレットhttps://www.city.sasebo.lg.jp/documents/2079/r8kaitaihojyosyuryo.pdf
- 佐世保市 申込フロー図https://www.city.sasebo.lg.jp/documents/2079/tosiseibijyutakdocumentsr8hojyokinflow.pdf