小規模宅地等の特例とは?自宅の相続税評価額を最大80%減額できる制度を整理

相続税の話でよく出てくる「小規模宅地等の特例」、実家の相続税評価額を最大80%も下げられる、かなりインパクトの大きい制度です。今回はその基本を整理します。
実家の土地を相続する場合、要件を満たせば相続税の評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」という制度があります。適用できるかどうかで相続税額が大きく変わることもあるため、実家じまいを考えるうえで欠かせない制度の一つです。この記事では、国税庁の情報をもとに基本を整理します。
作成日:2026-09-09
更新日:2026-09-27
小規模宅地等の特例とは
小規模宅地等の特例は、被相続人(亡くなった方)が住んでいた土地や事業に使っていた土地について、一定の面積までの部分の相続税評価額を、50%または80%減額できる制度です。実家(自宅)の土地に関わるのは、主に「特定居住用宅地等」という区分です。
| 宅地等の区分 | 限度面積 | 減額割合 |
|---|---|---|
| 特定居住用宅地等(自宅の土地) | 330㎡まで | 80% |
| 特定事業用宅地等(事業用の土地) | 400㎡まで | 80% |
| 貸付事業用宅地等(賃貸不動産の土地) | 200㎡まで | 50% |
出典:国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」
実家(自宅)の土地に該当する「特定居住用宅地等」は、330㎡までの部分について評価額を80%減額できます。例えば、評価額4,000万円・面積330㎡以下の自宅の土地であれば、4,000万円×80%=3,200万円が減額され、相続税評価額は800万円まで下がる計算になります。
誰が相続すれば適用できるのか
特定居住用宅地等の特例を使うには、「誰が」その土地を相続するかによって、満たすべき要件が変わります。主なパターンは次の通りです。
- 配偶者が相続する場合:無条件で適用可能(同居・居住継続の要件なし)
- 同居していた親族が相続する場合:相続税の申告期限まで、その土地を所有し、かつ引き続き居住していることが要件
- 同居していなかった親族が相続する場合(いわゆる「家なき子特例」):被相続人に配偶者・同居親族がいないこと、相続開始前3年以内に自己または自己の配偶者等が所有する家屋に住んだことがないこと等、複数の要件を満たす必要がある
ここが間違えやすいので注意!
「家なき子特例」は要件が細かく、持ち家がある親族に自宅を貸して自分は賃貸暮らしをしている、といったケースでは意図的な要件回避とみなされ適用できないよう制限が設けられています。誰が相続すれば適用できるかは家族構成・居住状況によって大きく変わるため、必ず税理士に個別の事情を確認してください。
特に注意が必要なのは、被相続人に配偶者も同居親族もいない場合に限って「家なき子特例」の対象になりうるという点です。例えば「配偶者は既に他界し、実家には被相続人一人で住んでいた」というケースであれば、遠方で賃貸暮らしをしている子が要件を満たせば適用できる可能性がありますが、「配偶者や同居していた別の家族がいる」場合は、そもそも家なき子特例の検討対象になりません。この整理を誤ると、適用できると思っていた特例が使えなかった、という事態にもなりかねません。
適用を受けるには、相続税の申告が必要
見落とされやすいポイントとして、小規模宅地等の特例は、適用した結果として相続税がゼロになる場合でも、相続税の申告書を提出しなければ適用を受けられません。「税額が発生しないから申告しなくていい」と思い込んで申告をしないと、特例が適用されず、本来より高い評価額のまま扱われてしまう可能性があります。
また、申告書には、遺産分割協議書の写しなど、誰がその宅地を取得するかが確定していることを示す書類の添付が必要です。相続税の申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)までに遺産分割が終わっていない場合は、いったん特例を使わない前提で申告し、分割確定後に更正の請求を行うという方法もあります。この点は手続きが複雑になりやすいため、早めに税理士に相談することをおすすめします。
実家を売却・活用する場合の注意点
小規模宅地等の特例は、あくまで相続税の計算上の評価額を下げる制度であり、その後に実家をどう扱うかを制限するものではありません。ただし、同居親族が適用を受ける場合は「相続税の申告期限まで所有・居住を続けること」が要件になっているため、申告期限(10ヶ月)より前に実家を売却・解体してしまうと、特例の適用要件を満たせなくなる可能性があります。実家じまいを急いで進める前に、この期限との関係を確認しておくことが重要です。
実家じまいとの関わり

実家の評価額が大きい地域ほど、この特例の効果は絶大です。「相続税がかかりそう」と思っても、この特例を使えば税額がゼロになるケースも多いです。ただし税額がゼロでも申告は必要なので、慌てて対策を考える前に、まずは適用できるかどうかと、申告が必要になる点をあわせて確認することをおすすめします。
実家の相続税評価額がそこまで大きくないと思っていても、都市部の土地であれば路線価によって評価額が数千万円規模になることもあります。小規模宅地等の特例が使えるかどうかで、相続税の要否が大きく変わることもあるため、当サイトの相続税かんたん計算ツールや相続税の申告書は自分で作れる?とあわせて、早めに概算を確認しておくことをおすすめします。路線価の調べ方は令和8年分路線価が公開されましたもご参照ください。
よくある質問
Q. 実家を相続人全員の共有名義で相続した場合も適用できますか?
共有名義で取得した場合、要件を満たす共有者の持分に対応する部分についてのみ特例が適用されるとされています。共有者ごとに居住状況等の要件を満たしているかを個別に判定する必要があるため、詳細は税理士にご確認ください。
Q. 実家が二世帯住宅の場合はどうなりますか?
建物の登記形態(区分所有登記の有無等)によって、同居とみなされるかどうかの扱いが変わります。二世帯住宅は要件判定が複雑になりやすい典型例とされているため、該当する場合は税理士への確認を強くおすすめします。
Q. 実家の土地が330㎡を超える場合はどうなりますか?
330㎡を超える部分については、特例の対象外となり、通常の評価額で計算されます。330㎡までの部分についてのみ80%減額が適用される、按分計算になります。
まとめ
小規模宅地等の特例は、実家の土地の相続税評価額を最大80%減額できる、影響の大きい制度です。ただし、誰が相続するかによって要件が変わり、適用を受けるには申告が必須である点、申告期限までの所有・居住継続が求められる場合がある点には特に注意が必要です。判断に迷う場合は、早めに税理士に相談することをおすすめします。
出典
- 国税庁タックスアンサー No.4124「相続した事業の用や居住の用の宅地等の価額の特例(小規模宅地等の特例)」https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4124.htm