実家じまいで相続放棄を検討したら、まず知っておきたいこと

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ごんぞう
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「実家に借金があるかもしれない」「そもそも実家を継ぐ人がいない」——そんな理由で相続放棄を考える方は少なくありません。ただし実家じまいとの関係では、「放棄すれば全部終わり」ではなく、意外と知られていない注意点がいくつかあります。今回はその全体像を整理しました。

相続放棄は、被相続人(亡くなった方)の財産だけでなく借金も含めて、一切を相続しないという選択です。実家じまいの場面では、「実家に住宅ローンや管理コストの負担が見合わない」「相続人間で実家を巡るトラブルを避けたい」といった理由で検討されることがあります。ただし、相続放棄をすれば実家についての責任が即座にすべてなくなるわけではないという点は、意外と知られていません。この記事では、相続放棄の基本的な仕組みから、実家じまいで特に注意したい落とし穴まで整理します。

作成日:2026-09-11
更新日:2026-09-11

相続放棄とは:最初から相続人でなかったことになる制度

相続放棄とは、家庭裁判所に申述することで、被相続人の権利義務を一切受け継がないことにする手続きです。相続放棄が認められると、その人は「最初から相続人ではなかった」ものとして扱われます(民法939条)。実家の土地建物や預貯金等のプラスの財産だけでなく、借金や保証債務等のマイナスの財産も含めて、すべてを相続しないことになります。「実家だけ相続放棄して、預貯金だけ受け取る」といった一部だけの放棄はできません。

また、相続放棄をすると、その人の相続権は次の順位の親族に移ります。例えば子が全員相続放棄をすると、被相続人の親(直系尊属)、それもいない場合は兄弟姉妹の順に相続権が移るとされています。自分が放棄したことで、疎遠になっている親族に借金の相続権が回ってしまうというケースも起こり得るため、相続放棄を決めた際は、次順位になる可能性のある親族に一声かけておくことが望ましいと言われています。

期限は「知った時から3ヶ月以内」(熟慮期間)

相続放棄は、自己のために相続の開始があったことを知った時から3ヶ月以内(熟慮期間)に、家庭裁判所に申述しなければならないと定められています(民法915条1項)。この3ヶ月は「亡くなった日」からではなく、「自分が相続人であると知った日」から起算される点に注意してください。例えば、先順位の相続人全員が相続放棄をしたことで自分に相続権が回ってきたことを後から知った場合は、その事実を知った時点から改めて3ヶ月がカウントされるとされています。

相続の開始を知った時から 3ヶ月(熟慮期間) 単純承認 プラスもマイナスもすべて相続 限定承認 プラスの範囲内でマイナスも引き継ぐ 相続放棄 プラスもマイナスも一切相続しない 何もしないまま3ヶ月経過 → 自動的に単純承認とみなされる

図:熟慮期間中に選べる3つの選択肢

期間内に相続放棄・限定承認のいずれの手続きもしなかった場合、単純承認をしたものとみなされます(法定単純承認、民法921条2号)。財産状況の調査に時間がかかる等の事情がある場合は、家庭裁判所に申し立てることで、この期間を伸長してもらえる場合があるとされています。

気づかないうちに「相続した」とみなされる行為に注意

ごんぞう
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ここが実家じまいとの関係で一番注意してほしいポイントです。相続放棄をするつもりで実家の片付けを始めたら、その行為自体で「相続した」とみなされてしまう可能性があります。

熟慮期間中であっても、相続財産の全部または一部を処分する等、一定の行為をすると「単純承認をしたもの」とみなされ、その後は相続放棄ができなくなるとされています(法定単純承認、民法921条1号)。実家じまいの場面で特に注意が必要な例としては、次のようなものが挙げられます。

  • 実家の家財・遺品をまとめて処分・売却する
  • 実家を修繕する目的で、被相続人の預貯金等から高額な支出をする
  • 実家を第三者に賃貸に出す
  • 被相続人名義の預貯金を解約して使う

一方で、建物の現状を維持するための「保存行為」や、一定期間を超えない短期の賃貸等は、単純承認とみなされない場合があるともされています。ただし、何が「保存行為」で何が「処分」にあたるかの線引きは個別の判断が難しく、専門家の間でも見解が分かれることがあるとされています。

ここが間違えやすいので注意!

相続放棄を検討している段階では、実家の家財処分・修繕・賃貸等に着手する前に、必ず弁護士・司法書士等の専門家に確認することを強くおすすめします。「片付けておいてあげよう」という善意の行動が、結果的に相続放棄をできなくしてしまうケースもあるとされています。

相続放棄をしても、実家の管理義務が残ることがある

2023年4月1日に施行された改正民法940条により、相続放棄をした人が、放棄の時点でその財産を現に占有している場合、次の相続人または相続財産清算人に財産を引き渡すまでの間、自己の財産におけるのと同一の注意をもってその財産を保存しなければならないと定められています。

つまり、実家に住んでいた、または実際に管理していた相続人が相続放棄をしても、誰か他の人(次順位の相続人や相続財産清算人)に実際に引き渡すまでは、空き家を完全に放置してよいわけではないという点は、見落とされがちなポイントです。改正前の規定(旧940条)は「相続人となった者が管理を始めることができるまで」というやや広い対象・水準でしたが、改正後は義務の対象が「現に占有している財産」に限定され、求められる注意の水準も「自己の財産におけるのと同一の注意」に整理されました。

相続放棄した人 (実家を現に占有) 保存義務あり (自己の財産と同一の注意) 次の相続人 or 相続財産清算人 引き渡すまでは保存義務が続く (民法940条、2023年4月改正)

図:相続放棄後も残りうる保存義務のイメージ

一方で、実家に住んでおらず、鍵も持たず、実際に占有していない相続人には、この保存義務は生じないと解されています。実家じまいを検討する場面では、「自分が実際にその家を占有・管理していたかどうか」が、相続放棄後の義務の有無を分けるポイントになります。

相続人全員が放棄した場合、実家はどうなる?

相続人全員が相続放棄をした場合、その相続財産は「相続人のいない財産」として扱われ、家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができます(民法952条)。相続財産清算人は、相続財産を管理し、債権者への清算等の手続きを行う専門家(多くの場合弁護士)で、家庭裁判所が選任します。相続財産清算人が選任され、実家をその人に引き渡すことができれば、それまで保存義務を負っていた元相続人(現に占有していた人)は、その義務から解放されることになります。

ここが間違えやすいので注意!

相続財産清算人の選任の申立てには、予納金(数十万円程度が目安とされる場合がある)が必要になることがあります。誰がこの費用を負担してまで申立てを行うのか、実務上の悩みどころとして指摘されています。実家の状況(保存義務の有無や負担の大きさ)によって、申立てを検討すべきかどうかは変わってくるため、弁護士等の専門家に相談することをおすすめします。

相続放棄の手続きの流れ

  1. 家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出する:被相続人の最後の住所地を管轄する家庭裁判所に提出します。
  2. 必要書類を揃える:申述人の戸籍謄本、被相続人の住民票除票(または戸籍附票)等が必要です。申述人と被相続人の続柄によって、追加で必要な戸籍謄本等が変わります。
  3. 家庭裁判所からの照会に回答する:申述の内容や経緯について、家庭裁判所から照会書が送られてくることがあります。
  4. 相続放棄申述受理通知書を受け取る:家庭裁判所が申述を受理すると、通知書が送付されます。

必要書類は申述人と被相続人の関係によって細かく異なるため、詳しくは家庭裁判所の窓口・公式サイト、または弁護士・司法書士にご確認ください。

実家じまいとの関わり

実家に借金や、収支が見合わない管理コストがある場合、相続放棄は選択肢の一つになります。ただし、「放棄すれば即座にすべて終わり」ではなく、現に占有している場合の保存義務が残りうる点、他の相続人・相続財産清算人への引き継ぎが必要になりうる点を踏まえたうえで判断することが大切です。実家じまい全体の流れは実家じまいとは?、手続きの期限を横断的に確認したい場合は実家じまいの手続き、期限が近い順に一覧、相続人が複数いる場合の注意点は相続人が複数いる実家の注意点もあわせてご覧ください。専門用語の意味を確認したい場合は用語集もどうぞ。

よくある質問

Q. 相続放棄をすれば、実家の固定資産税を払わなくてよくなりますか?

相続放棄が受理されれば、その人は相続人ではなくなるため、原則として実家の固定資産税の納税義務も負わなくなるとされています。ただし、放棄が受理される前(熟慮期間中)に納税通知が来た場合の扱いや、放棄後に現に占有している場合の保存義務とは別の問題であるため、個別の状況は自治体・税理士にご確認ください。

Q. 他の相続人に知らせずに相続放棄してもいいですか?

法律上、他の相続人への通知は義務付けられていません。ただし、自分が放棄したことで相続権が次順位の親族(親や兄弟姉妹等)に移り、知らないうちに借金を相続してしまうケースがあるとされているため、事前に一声かけておくことが望ましいと言われています。

Q. 相続放棄した後に、実家に高価な遺品があることに気づきました。持ち帰ってもいいですか?

相続放棄後に相続財産を処分すると、単純承認をしたとみなされる法定単純承認の規定に触れる可能性があるとされています。相続放棄が受理された後であっても、勝手に財産を持ち出さず、弁護士等の専門家に確認することをおすすめします。

Q. 相続放棄の期限(3ヶ月)に間に合いそうにありません。

財産状況の調査に時間がかかる等の事情がある場合、家庭裁判所に申し立てることで熟慮期間の伸長が認められる場合があるとされています。期限が近づいている場合は、早めに家庭裁判所または弁護士等にご相談ください。

まとめ

項目内容
相続放棄の効果最初から相続人でなかったものとして扱われる(民法939条)
期限自己のために相続の開始を知った時から3ヶ月以内(民法915条、伸長の申立ても可能)
注意点1財産の処分等をすると法定単純承認とみなされ、放棄できなくなる(民法921条)
注意点2放棄後も、現に占有している財産は次の管理者に引き渡すまで保存義務が残る(民法940条、2023年4月改正)
全員放棄した場合家庭裁判所に相続財産清算人の選任を申し立てることができる(民法952条)

出典

  1. e-Gov法令検索「民法」第915条、第921条、第939条、第940条、第952条https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=129AC0000000089
  2. 裁判所「相続の放棄の申述」https://www.courts.go.jp/saiban/syurui/syurui_kazi/kazi_06_10/index.html
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