相続税・税金

相続時精算課税制度とは?令和6年からの変更点(年110万円の基礎控除)を整理

相続時精算課税制度とは?令和6年からの変更点(年110万円の基礎控除)を整理
gonzo
ごんぞう
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「相続時精算課税制度」、名前は聞いたことがあっても仕組みが分かりにくい制度の代表格だと思います。令和6年から使いやすくなったと言われているので、基本から整理してみます。

生前贈与の制度の一つである「相続時精算課税制度」は、令和6年(2024年)1月から制度の内容が変わり、以前より使いやすくなったとされています。実家の生前贈与を検討する際にも関わってくる制度のため、この記事で基本を整理します。

最終確認日:2026-09-06

相続時精算課税制度とは

相続時精算課税制度は、60歳以上の父母・祖父母などから、18歳以上の子・孫などへの贈与について、選択できる贈与税の課税方式です。この制度を選択すると、贈与時にはまとまった非課税枠(累計2,500万円まで)の範囲内であれば贈与税がかからず、その代わり、贈与した財産は、贈与者が亡くなったときの相続税の計算に「相続財産」として合算(精算)されるという仕組みになっています。

通常の贈与(暦年課税)と、相続時精算課税制度は、どちらか一方を選択する仕組みで、一度相続時精算課税を選択すると、同じ贈与者からの贈与について、その後は暦年課税に戻すことができません。

令和6年からの変更点:年110万円の基礎控除が新設

国税庁の資料によると、令和5年度税制改正により、相続時精算課税制度に「年110万円の基礎控除」が新たに設けられ、令和6年1月1日以後の贈与から適用されています。この基礎控除により、次のような変化が生じています。

項目令和5年まで令和6年以降
年110万円の基礎控除なしあり(新設)
基礎控除内の贈与の申告(2年目以降)−贈与税の申告書は不要
基礎控除内の贈与の相続財産への加算−相続税の計算に加算されない
制度を初めて選ぶ年の届出選択届出書が必要選択届出書は基礎控除額にかかわらず必要

出典:国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」

これまでは、相続時精算課税を選択すると、少額の贈与であっても毎年申告が必要で、かつ将来の相続財産に加算される対象になっていました。年110万円の基礎控除ができたことで、2年目以降は、その範囲内の贈与であれば贈与税の申告書は不要になり、相続財産にも加算されなくなりました。

ここが間違えやすいので注意!

年110万円の基礎控除の範囲内であっても、相続時精算課税を初めて選択する年だけは別です。国税庁の案内によると、その選択に係る最初の贈与を受けた年の翌年2月1日から3月15日までに「相続時精算課税選択届出書」を提出する必要があります。「基礎控除内だから何も手続きしなくてよい」わけではなく、この選択届出書の提出だけは、金額にかかわらず初回に必要になる点に注意してください。

この改正が「使いやすくなった」と評価される理由は、それ以前は、たとえ数万円程度の少額の贈与であっても、相続時精算課税を選択している以上は毎年律儀に贈与税の申告書を提出し続ける必要があったためです。申告を忘れると、思わぬ形で不利益を被る可能性もあり、この手間の大きさが制度の利用が広がらない一因になっていたとも指摘されています。基礎控除の新設により、こうした事務負担が大きく軽減された点が、実務上のインパクトとして評価されています。

暦年課税との大きな違い:生前贈与加算

暦年課税を選んだ場合、相続開始前の一定期間内(令和6年以降の贈与は原則7年以内、経過措置あり)の贈与は、相続財産に加算されるという「生前贈与加算」のルールがあります。相続時精算課税制度を選択した場合は、年110万円の基礎控除を超えた部分は、贈与の時期にかかわらずすべて将来の相続財産に加算されますが、基礎控除(年110万円)以内の部分については、この生前贈与加算の対象にならないという違いがあります。

ここが間違えやすいので注意!

相続時精算課税制度は、贈与税を「非課税にする」制度ではなく、「相続時にまとめて精算する」制度です。2,500万円までの非課税枠を使っても、その財産は将来の相続税の計算対象になります。相続税自体が非課税になるかどうかは、相続財産全体の額や基礎控除(3,000万円+600万円×法定相続人数)等、別の要素によって決まります。節税効果があるかどうかは家庭ごとの財産状況によって異なるため、必ず税理士にシミュレーションを依頼することをおすすめします。

利用者数は増加傾向

各種報道によると、相続時精算課税制度を適用した申告者数は、基礎控除が新設される前の令和5年分は約4万9千人だったのに対し、制度改正後の令和6年分は約7万8千人へと大幅に増加したと報じられています。基礎控除の新設によって、申告の手間や将来の相続財産への影響を抑えながら利用できるようになったことが、利用増加の一因と考えられます。

実家じまいとの関わり

ごんぞう
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実家の土地・建物そのものを生前に贈与する場合にも、この制度は選択肢になり得ます。ただし不動産の場合は評価額の算定や登録免許税・不動産取得税なども絡んでくるため、単純な現金贈与よりも慎重な試算が必要です。

実家を将来相続するのではなく、生前贈与で早めに名義を移しておきたいと考える場合、相続時精算課税制度は選択肢の一つになります。ただし、不動産を贈与する場合は贈与税だけでなく、登録免許税・不動産取得税といった別の税金も発生する点、そして小規模宅地等の特例(小規模宅地等の特例とは?)のような、相続でなければ使えない制度もある点には注意が必要です。生前贈与と相続、どちらが有利かはケースバイケースであるため、実行前に必ず税理士に相談することをおすすめします。相続税の概算は相続税かんたん計算ツールもご参照ください。

よくある質問

Q. 相続時精算課税制度を選ぶと、暦年課税の基礎控除(110万円)は使えなくなりますか?

相続時精算課税制度は贈与者ごとに選択する制度です。特定の贈与者(例:父)について相続時精算課税を選択しても、別の贈与者(例:母)からの贈与については、暦年課税を選ぶことができます。

Q. 2,500万円の非課税枠を超えた場合はどうなりますか?

累計2,500万円の非課税枠(基礎控除を除く)を超えた部分については、一律20%の税率で贈与税が課されます。この納めた贈与税は、将来の相続税の計算時に相続税額から控除(精算)されます。

Q. 一度この制度を選択したら、途中でやめることはできますか?

できません。同じ贈与者からの贈与について相続時精算課税制度を選択すると、その後、その贈与者が亡くなるまで、暦年課税に変更することはできない仕組みになっています。選択する前に、慎重な検討をおすすめします。

まとめ

相続時精算課税制度は、令和6年から年110万円の基礎控除が新設され、以前より使いやすくなりました。ただし、贈与税が非課税になるだけで相続税は別途精算される仕組みであり、一度選択すると暦年課税に戻せない点にも注意が必要です。実家の生前贈与を検討する場合は、必ず税理士にシミュレーションを依頼することをおすすめします。


出典

  1. 国税庁「令和5年度 相続税及び贈与税の税制改正のあらまし」https://www.nta.go.jp/taxes/tetsuzuki/shinsei/shinkoku/zoyo/tebiki2023/pdf/030.pdf
  2. 国税庁 No.4103「相続時精算課税の選択」(選択届出書の提出期限)https://www.nta.go.jp/taxes/shiraberu/taxanswer/sozoku/4103.htm
  3. 利用者数の推移は、国税庁の公表統計を紹介する各種報道を参考に当サイトで整理
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