相続人が複数いる場合、実家はどうなる?法定相続分・遺産分割協議・共有名義のリスクを整理

実家の相続人が複数いると、「何も決めなかったらどうなるの?」「実家って結局誰のものになるの?」って気になりますよね!今日は法定相続分・遺産分割の方法・共有名義のリスクまで、民法をもとにじっくり整理していきます!
実家の相続人が複数いるとき、「何も決めなかったら実家ってどうなるんだろう?」「話し合いはいつまでにしないといけないの?」と気になる方は多いと思います。この記事では、法定相続分・遺産分割の具体的な方法・共有名義のリスクについて、民法の内容を事実として整理しました!実際の状況に応じた判断は、司法書士等の専門家にご確認くださいね。
作成日:2026-08-11
更新日:2026-09-10
そもそも「相続人」は誰になるのか
民法では、配偶者は常に相続人となり、それ以外の相続人には優先順位があります。第1順位が子(いなければ孫などの直系卑属)、第2順位が父母などの直系尊属、第3順位が兄弟姉妹です。上の順位の人が1人でもいれば、下の順位の人は相続人になりません。
代襲相続にも注意
本来相続人になるはずだった子や兄弟姉妹が、被相続人より先に亡くなっていた場合、その人の子(孫や甥・姪)が代わりに相続人になることがあります。これを「代襲相続」と呼びます。疎遠だった甥や姪が急に相続人として登場する、というケースもこの制度によるもので、相続人の人数や関係が見た目以上に複雑になる一因です。
出典:民法887条・889条
法定相続分とは
相続人が複数いる場合、民法は各相続人の取り分の目安として「法定相続分」を定めています。
配偶者と子がいる場合
配偶者と子が相続人になる場合、法定相続分は配偶者2分の1、子2分の1です!子が複数いれば、2分の1をさらに人数で均等に分けます。
図:組み合わせ別に見る法定相続分の割合
配偶者と直系尊属・兄弟姉妹の場合
子がいない場合は、配偶者と父母などの直系尊属が相続人になり、法定相続分は配偶者3分の2・直系尊属3分の1です。直系尊属もいない場合は配偶者と兄弟姉妹が相続人になり、配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1になります。
法定相続分は「絶対のルール」ではない
法定相続分はあくまで目安で、必ずこの割合で分けなければいけないという強制力はありません!遺言があれば原則その内容が優先されますし、遺言がなくても相続人全員が話し合い(遺産分割協議)で合意すれば、法定相続分と違う分け方にすることもできます。
出典:民法900条・901条
実家はどう分ける?遺産分割の4つの方法
現金と違って、実家のような不動産は「そのまま3等分」がしにくい財産です。民法上、遺産の分け方には主に次の4パターンがあるとされています。
| 方法 | 内容 |
|---|---|
| 現物分割 | 実家は長男、預貯金は長女、というように財産の形を変えずに分ける方法 |
| 代償分割 | 1人が実家を取得する代わりに、他の相続人に相応の現金(代償金)を支払う方法 |
| 換価分割 | 実家を売却して現金化し、その代金を相続人で分ける方法 |
| 共有分割 | 実家を相続人全員の共有名義のまま相続する方法 |

実務上は、現物分割→代償分割→換価分割→共有分割の順で検討されることが多いとされています。つまり共有分割は「他の方法がどうしても難しいときの最終手段」という位置づけなんです!共有名義には後述するようなリスクがあるので、代償分割(誰か1人が実家を取得し、他の人にはお金で調整する)や換価分割(売って現金で分ける)で解決できないか、先に検討する価値がありますよ。
遺産分割協議とは
相続人全員の合意で決める
実家を含む遺産の具体的な分け方(上記のどの方法にするか)は、相続人全員が参加する遺産分割協議で決めます。誰か1人でも欠けたままでは成立しません。
令和5年4月1日の民法改正で追加された期限
遺産分割協議そのものに「いつまでに終わらせなければいけない」という期限はありません。ただし、令和5年4月1日に施行された民法改正により、生前に受けた贈与(特別受益)や、被相続人の財産維持・増加に貢献した事情(寄与分)を主張して法定相続分と違う取り分を求める場合は、相続開始から10年以内に遺産分割を行う必要があるとされました。10年を過ぎると、原則として法定相続分での分割になります。
ここが間違えやすいので注意!
「遺産分割協議に期限はない」と聞くと、いつまでも先延ばしにできると思ってしまいがちです。ただし特別受益・寄与分を主張したい場合は10年という区切りがあるので、「うちは複雑になりそうだから」というケースほど、早めに動き出したほうが選択肢を残しやすい制度になっています!
出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)
遺産分割がまとまらないまま放置するとどうなるか
遺産分割協議がまとまらないまま実家を放置していても、相続登記の義務そのものはなくなりません。令和6年4月1日に施行された相続登記の義務化により、遺産分割が未了でも、相続の開始と不動産取得を知った日から3年以内に、法定相続分での相続登記または相続人申告登記のどちらかを行う必要があります。その後、遺産分割が成立したら、成立日から3年以内に内容を反映した登記をもう一度申請することが義務になっています。
相続登記の義務化の詳細は、相続登記の義務化とは?期限・過料・対象者を法務省の情報から整理をご確認ください。
共有名義で相続した場合のリスク
遺産分割協議がまとまらない場合や、あえて共有名義のまま相続登記をした場合(前述の「共有分割」)、その不動産は相続人全員の共有状態になります。共有名義の不動産は、やりたいことの種類によって必要な同意の範囲が変わるという特徴があります。
行為の種類によって必要な同意が変わる
| 行為の種類 | 内容の例 | 必要な同意 |
|---|---|---|
| 保存行為 | 修繕、不法占有者への明渡請求など | 共有者が単独でできる |
| 管理行為 | 軽微な変更、短期の賃貸借契約など | 持分の価格の過半数 |
| 変更行為 | 売却、大規模なリフォーム・建替えなど | 共有者全員の同意 |
実家を売りたい、または大規模にリフォームしたいとなったとき、共有名義のままだと共有者全員のハンコが必要になる、ということです。誰か1人でも連絡が取れない・意見が合わないと、話が止まってしまう可能性があります。
出典:民法252条、法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)
世代を重ねるごとに共有者が増えるリスク
共有者の1人が亡くなり、その持分をさらに複数の相続人が相続すると、共有者の人数は世代を経るごとに増えていく可能性があります。共有者が増えるほど、売却などの全員同意が必要な行為の意思決定は難しくなっていきます。
所在不明の共有者がいる場合の救済制度
令和5年の民法改正では、共有者の一部が所在不明な場合に、裁判所の関与のもとで持分の取得や共有物の変更・管理を行うための制度が新設されました。具体的には、裁判所の決定を得ることで、所在等が不明な共有者の持分を他の共有者が取得できる制度や、管理が行き届いていない土地・建物について裁判所が選任した管理人が対応できる制度などが整備されています。共有状態の解消を検討する際は、司法書士等の専門家にご確認ください。
出典:法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し」(https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html)
よくある質問
Q. 相続人の1人と連絡が取れません。それでも遺産分割協議はできますか?
遺産分割協議は相続人全員の参加が必要とされているため、連絡が取れないまま進めることは基本的にできません。住所がわからない場合は戸籍の附票などで調査する方法があり、それでも見つからない場合は家庭裁判所の不在者財産管理人の制度等を利用する道もあります。詳しくは司法書士や弁護士にご相談ください。
Q. 実家に住み続けたい相続人がいる場合はどうなりますか?
その相続人が代償分割で実家を取得し、他の相続人には代償金を支払う、という形で解決されるケースが一般的とされています。代償金を用意できない場合は、他の分割方法との組み合わせを検討することになります。個別の事情による判断は専門家にご確認ください。
まとめ
| 項目 | 内容 |
|---|---|
| 法定相続分(配偶者+子) | 配偶者2分の1・子2分の1 |
| 法定相続分(配偶者+直系尊属) | 配偶者3分の2・直系尊属3分の1 |
| 法定相続分(配偶者+兄弟姉妹) | 配偶者4分の3・兄弟姉妹4分の1 |
| 遺産分割の方法 | 現物分割/代償分割/換価分割/共有分割の4種類 |
| 特別受益・寄与分の主張期限 | 相続開始から10年以内(令和5年4月1日施行) |
| 共有物の変更行為(売却等) | 共有者全員の同意が必要 |
相続登記そのものの義務化については、相続登記の義務化とは?期限・過料・対象者を法務省の情報から整理をご覧ください。
代償分割の具体例
「実家はどう分ける?」の章で紹介した代償分割について、もう少し具体的にイメージしてみましょう。
たとえば、実家(評価額3,000万円)と預貯金300万円が遺産のすべてで、相続人が長男・長女の2人だったとします。法定相続分どおりであれば、それぞれ1,650万円分(3,300万円÷2)を受け取る計算になります。長男が実家に住み続けたい場合、長男が実家(3,000万円)を取得し、長女は預貯金300万円に加えて、長男から現金1,350万円を「代償金」として受け取ることで、実質的に取り分を1,650万円ずつにそろえる、という形が代償分割のイメージです。

代償分割のポイントは、実家を取得する側にまとまった現金を用意する必要があるという点です!代償金が用意できない場合は、実家を売って現金化する換価分割や、一部だけ共有にするなど、他の方法との組み合わせも検討されることがあります。数字はあくまで一例なので、実際の按分方法は専門家に相談するのが確実ですよ。
よくある質問(続き)
Q. 相続人の1人が相続放棄した場合、法定相続分はどう変わりますか?
相続放棄をした人は、最初から相続人ではなかったものとして扱われます。そのため、残りの相続人で法定相続分を計算し直すことになります。たとえば子が2人のうち1人が放棄した場合、残る子が単独で子の相続分(配偶者がいれば2分の1)をすべて受け取る計算になります。放棄によって次の順位の人(父母や兄弟姉妹)が新たに相続人になることもあるため、詳細は司法書士・弁護士にご確認ください。
Q. 遺産分割協議書は自分たちで作成できますか?
形式上は相続人自身で作成することも可能とされています。ただし不動産の記載方法に不備があると、後の相続登記の手続きで書き直しが必要になることもあります。内容に不安がある場合は、司法書士等に確認・作成を依頼するケースも多いようです。
出典
- 民法887条・889条・900条・901条・252条
- 法務省「所有者不明土地の解消に向けた民事基本法制の見直し(民法・不動産登記法等一部改正法・相続土地国庫帰属法)」https://www.moj.go.jp/MINJI/minji05_00343.html