相続税の申告、16万7千人で過去最多|相続財産の3割は「土地」という事実

国税庁が令和6年分の相続税の申告状況をまとめた資料を公表しました。「うちには関係ない」と思っている方も多いかもしれませんが、相続財産の中身を見ると、実は「土地」が3割を占めているという結果が出ています。実家を持つ方にとって、決して他人事ではない数字が並んでいます。
国税庁は令和7年12月、令和6年分の相続税の申告状況をまとめた「相続税の申告事績の概要」を公表しました。相続税の申告書を提出した人は約16万7千人で、基礎控除が引き下げられた平成27年分以降で最多となりました。さらに、申告された相続財産の内訳を見ると、現金・預貯金に次いで多いのが「土地」で、全体の30.2%を占めています。実家(土地・建物)を持つ人にとって、この統計は身近な数字として捉えられそうです。
作成日:2026-09-20
更新日:2026-09-20
統計の概要
「相続税の申告事績の概要」は、国税庁が毎年公表している統計で、その年に亡くなった方(被相続人)の数と、そのうち実際に相続税の申告書が提出された件数、申告された財産の内訳等がまとめられています。実際に税務署へ提出された申告書に基づく集計であるため、相続税に関する実態を把握するうえで最も基本的な資料の一つとされています。
出典:国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月16日公表)(https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/index.htm)

死亡者数160万人のうち、申告したのは16万7千人
令和6年中の死亡者数(被相続人数)は1,605,378人で、このうち相続税の申告書を提出したのは約16万7千人でした。亡くなった方全体に占める申告書提出者の割合(課税割合)は10.4%となっています。
| 項目 | 令和6年分 |
|---|---|
| 死亡者数(被相続人数) | 1,605,378人 |
| 相続税の申告書提出者数 | 約167,000人 |
| 課税割合 | 10.4% |
「10人に1人程度しか相続税はかからない」と捉えると、多くの人にとって縁のない税金のように思えるかもしれません。しかし、申告書提出者数が基礎控除引き下げ後で最多を更新したという事実は、地価の上昇等を背景に、相続税の対象になる世帯が緩やかに増えている可能性を示しています。
相続財産の構成、「土地」が3割を占める
申告された相続財産の金額を種類別に見ると、次のような構成になっています。
| 財産の種類 | 構成比 |
|---|---|
| 現金・預貯金等 | 34.9% |
| 土地 | 30.2% |
| 有価証券 | 17.8% |
| 家屋 | 4.8% |
| その他(家庭用財産、生命保険金等) | 12.3% |
最も多いのは現金・預貯金等の34.9%ですが、これに次ぐのが「土地」の30.2%です。家屋(4.8%)と合わせると、不動産全体で相続財産の3分の1以上を占めている計算になります。
図:相続財産の種類別構成比(国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」より)
なぜ土地の割合がこんなに高いのか
相続財産に占める土地の割合が高い理由の一つとして考えられるのが、多くの家庭にとって「実家の土地」が、現金や有価証券と違って売却しない限り保有し続ける資産であるという点です。預貯金や株式は生前に使ったり取り崩したりしやすい一方、住み続けている(あるいは、住んでいなくても手放していない)実家の土地は、そのまま相続財産としてカウントされることになります。
加えて、三大都市圏を中心とした地価の上昇も、土地の評価額を押し上げる要因になっていると考えられます。令和8年分の路線価が全国平均で+2.9%となったことも、当サイトの別記事で紹介しています。地価が上がれば、それだけ相続税評価額も上がり、これまで基礎控除の範囲内だった家庭が課税対象になる可能性が出てきます。
もう一つの背景として、平成27年分の税制改正で基礎控除額が引き下げられた(改正前は「5,000万円+1,000万円×法定相続人数」、改正後は「3,000万円+600万円×法定相続人数」)ことも挙げられます。この改正によって、それまで相続税と無縁だった多くの家庭が新たに課税対象の範囲に入ったとされており、今回の統計で申告書提出者数が改正後で最多を更新したという結果は、その傾向が地価上昇と相まって続いていることを示しているとも考えられます。
基礎控除のしくみをおさらい

相続税は、遺産総額が「基礎控除額」を超える場合にのみ発生します。基礎控除額は次の計算式で求められます。
基礎控除額 = 3,000万円 +(600万円 × 法定相続人の数)
たとえば法定相続人が3人(配偶者と子2人等)であれば、基礎控除額は3,000万円+600万円×3人=4,800万円です。実家の土地・建物の評価額に、預貯金等その他の財産を合計した金額がこの基礎控除額を超えるかどうかが、相続税申告が必要かどうかの最初の目安になります。都市部の実家であれば、土地の評価額だけで数千万円になることも珍しくないため、預貯金がそれほど多くなくても基礎控除を超えるケースがあります。
ご自身の状況で概算を知りたい場合は、当サイトの相続税かんたん計算ツールや、国税庁の「申告要否判定コーナー」(こちらの記事で使い方を紹介しています)をご利用ください。
「自分は関係ない」と思っていても注意したいケース
課税割合が10.4%ということは、裏を返せば約9割の家庭では相続税がかからないということでもあります。ただし、次のようなケースでは、想定より評価額が高くなり、課税対象になる可能性がある点に注意が必要です。
- 実家が地価の高いエリア(駅近、都市部等)にある場合
- 実家以外にも、別荘・貸家・農地・山林等の不動産を所有している場合
- 生命保険金・死亡退職金等、見落としがちな「みなし相続財産」がある場合
- 複数の相続が短期間に続けて発生している場合(相次相続)
特に、実家の評価額を大きく左右する「小規模宅地等の特例」(要件を満たせば評価額を最大80%減額できる制度)を適用できるかどうかで、課税の有無が変わることもあります。詳しくは小規模宅地等の特例とは?で解説しています。
評価額を左右する「特例」の存在を知っておく
相続税の計算では、財産の「評価額」がそのまま課税対象になるわけではなく、一定の要件を満たす場合に評価額を減額できる特例がいくつか用意されています。代表的なものが、被相続人が住んでいた自宅の土地について、要件を満たす相続人が引き続き住む・保有する等の条件のもとで評価額を最大80%減額できる「小規模宅地等の特例」です。この特例が使えるかどうかで、実家の土地の評価額が大きく変わり、結果として基礎控除を超えるかどうかの判断が変わってくることがあります。
ただし、この特例は自動的に適用されるものではなく、相続税の申告をすることが適用の条件とされています。前述のとおり、特例を適用した結果として税額がゼロになる場合でも、申告書の提出自体は必要になる点に注意が必要です。適用要件(誰がどのように取得するか、居住・保有の継続等)は細かく定められているため、該当しそうな場合は早めに税理士に相談することをおすすめします。
実家じまいとの関わり
相続財産の3割が土地であるという事実は、実家を持つ家庭にとって、相続税が「自分には関係ない話」ではない可能性を示しています。まずはご自身の状況で概算を把握することが第一歩です。当サイトの相続税かんたん計算ツールで目安を確認したうえで、基礎控除を超えそうな場合は、早めに税理士への相談を検討することをおすすめします。実家じまい全体の費用感については実家じまいにかかる費用まとめもあわせてご覧ください。
よくある質問
Q. 基礎控除を超えるかどうか、自分で調べる方法はありますか?
固定資産税評価額(毎年送られてくる納税通知書に記載)や路線価をもとに、おおまかな土地の評価額を把握することができます。当サイトの相続税かんたん計算ツールや、国税庁の「申告要否判定コーナー」を使うと、より具体的な概算を確認できます。
Q. 相続税がかからない場合でも、申告は必要ですか?
原則として、遺産総額が基礎控除額以下であれば申告は不要です。ただし、小規模宅地等の特例等、一部の税額軽減の特例は、適用の結果として税額がゼロになる場合でも申告が必要とされています。該当するかどうかは税理士にご確認ください。
Q. 相続税の申告期限はいつまでですか?
相続の開始(被相続人の死亡)を知った日の翌日から10ヶ月以内とされています。申告期限までに遺産分割協議がまとまらない場合の対応等、実務上の注意点も多いため、早めに準備を始めることをおすすめします。
実家じまいの現場では、相続人が複数いて遺産分割協議がまとまらないまま申告期限を迎えてしまうというケースも少なくありません。この場合、いったん法定相続分どおりに分割したものと仮定して申告・納税を行い(未分割申告)、後日、実際の遺産分割が確定した時点で修正するという方法があります。ただし、この方法では小規模宅地等の特例等、一部の税額軽減の特例が原則として使えなくなるため、「申告期限後3年以内の分割見込書」を提出しておく等、追加の手続きが必要になります。相続人間で意見が分かれている場合は共有名義の実家、一人が反対したら売れない?も参考にしつつ、早めに専門家に相談することをおすすめします。
Q. 土地の評価額はどうやって決まるのですか?
市街地にある宅地は主に「路線価方式」で、路線価が定められていない地域は「倍率方式」で評価するとされています。路線価は国税庁が毎年公表しており、当サイトでも令和8年分路線価が公開されましたで最新の動向を紹介しています。
Q. 相続税の申告を自分でやることはできますか?
制度上は自分で申告することも可能です。ただし、土地の評価や各種特例の適用判断は専門的な知識が必要になる場面が多く、内容が複雑な場合や高額な財産がある場合は、税理士に依頼するケースが一般的です。当サイトは特定の税理士のご紹介や送客は行っておりません。
Q. 相続税の申告を税理士に頼むと、費用はどれくらいかかりますか?
財産の内容や規模、相続人の数、土地の評価の難易度等によって大きく異なります。一般的には遺産総額に対する一定の料率で報酬が設定されることが多いとされていますが、事務所によって料金体系は様々です。依頼を検討する場合は、複数の税理士事務所から見積もりを取って比較することをおすすめします。当サイトは特定の事務所のご紹介や送客は行っておりません。
Q. 相続税がかかることが分かった場合、何から準備すればいいですか?
まずは財産の全体像(不動産・預貯金・有価証券・生命保険等)を洗い出すことが最初のステップです。そのうえで、遺産分割協議を進め、申告期限(相続開始を知った日の翌日から10ヶ月以内)から逆算して、税理士への相談や必要書類の収集を進めていくことになります。実家じまいの手続き全体の期限については実家じまいの手続き、期限が近い順に一覧もあわせてご確認ください。
まとめ
令和6年分の相続税申告状況からは、申告書提出者数が基礎控除引き下げ後で最多を更新したこと、そして相続財産の3割を「土地」が占めていることが分かりました。課税割合10.4%という数字だけを見て「自分には関係ない」と判断するのではなく、実家の土地の評価額がどの程度になるのか、一度確認しておくことが、相続税で慌てないための第一歩と言えそうです。基礎控除を超えそうな場合や、判断に迷う場合は、早めに税理士へ相談することをおすすめします。
出典
- 国税庁「令和6年分 相続税の申告事績の概要」(令和7年12月16日公表)https://www.nta.go.jp/information/release/kokuzeicho/2025/sozoku_shinkoku/index.htm