宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金|世帯所得818万円以下等の要件、補助率3分の2・上限70万円を整理

栃木県宇都宮市の「老朽危険空き家除却費補助金」には、他の自治体ではあまり見かけない「世帯の所得制限」という要件があります。所得が一定額を超えると、たとえ建物が老朽危険空き家に該当しても補助を受けられません。今日は、宇都宮市の交付要綱に沿って、この所得要件を含めた制度の中身を詳しく整理します。
栃木県の県庁所在地である宇都宮市には、「老朽危険空き家除却費補助金」という制度があります。補助率は除却費用の3分の2、上限70万円と手厚い一方で、世帯の合計所得が818万円(単身世帯は780万円)を超えると対象外になるという所得制限が設けられているのが大きな特徴です。この記事では、宇都宮市の交付要綱と事前記載用の確認表をもとに、対象となる建物の要件、所得制限を含む申請者の条件、手続きの流れを整理します。
作成日:2026-10-04
更新日:2026-10-07
令和8年度の受付は終了しています(2026年10月7日確認)
この記事で紹介している令和8年度の申請受付期間(令和8年4月1日〜5月29日)は、すでに過ぎています。令和9年度の受付については、宇都宮市の公式ページでご確認ください。以下の制度の内容は、令和8年度のものです。
制度の概要
「宇都宮市老朽危険空き家除却費補助金」は、旧耐震基準の建物や、接道要件を満たさない敷地にある老朽化した空き家について、除却(解体)費用の一部を市が補助する制度です。人口約51万人の中核市である宇都宮市でも、他の自治体と同じく、相続をきっかけに管理されなくなった空き家の増加が課題となっており、その解消策の一つとしてこの補助金が運用されています。
この制度が対象とする「老朽危険空き家」は、空家等対策の推進に関する特別措置法上の「特定空家等」に該当する空き家のうち、宇都宮市が独自に定めた処分基準を満たすものです。特定空家等に認定されると、自治体から助言・指導、勧告、命令へと段階的に対応が強まり、勧告を受けた段階で固定資産税の住宅用地特例が外れる扱いになります。全国的な指導・勧告・命令の件数は特定空家等への指導・勧告・命令、累計41,476件にで紹介していますが、こうした強制的な措置が取られる前に、所有者自身が補助金を活用して自主的に解体する、というのがこの制度の狙いだと考えられます。
出典:宇都宮市「老朽危険空き家除却費補助金」(https://www.city.utsunomiya.lg.jp/kurashi/anshin/1016717/1023258/1013763.html)、宇都宮市老朽危険空き家除却費補助金交付要綱

補助率:除却費の3分の2、上限70万円
補助額は、次の2つの金額のうち、低いほうの金額の3分の2で、上限は70万円です(千円未満切り捨て)。
- 実際に除却に要した額(消費税・地方消費税を除く)
- 対象建物の延べ床面積 × 11,000円/㎡
つまり、実際の見積額がいくら高くても、延べ床面積×11,000円という基準額を超える部分は補助の計算対象になりません。当サイトで試算すると、延べ床面積100㎡の住宅であれば基準額は110万円となり、実際の除却費がこれ以下であれば実額の3分の2、これを超える場合は110万円の3分の2(約73万円、ただし上限70万円)が補助額の目安になります。
| 延べ床面積 | 基準額(面積×11,000円) | 補助額の目安(上限70万円) |
|---|---|---|
| 60㎡ | 66万円 | 約44万円 |
| 90㎡ | 99万円 | 66万円 |
| 110㎡ | 121万円 | 70万円(上限) |
上の試算は、実際の除却費が基準額と同じかそれ以上であることを前提にした、当サイトによる目安の計算です。実際の除却費が基準額より低い場合は、実額の3分の2が補助額になります。
この「延べ床面積×11,000円/㎡」という基準額の考え方は、実際の見積額がどうであれ、面積から算出される一定の金額を上限として補助額を計算するという、いわば公平性を保つための仕組みだと考えられます。仮に業者の言い値で高額な見積りが提示されたとしても、補助額の計算はこの基準額が上限になるため、市としては過大な補助を防ぐ効果があります。逆に、複数の解体業者から相見積もりを取り、相場に見合った適正な価格で契約できれば、実際の除却費とこの基準額との差が縮まり、補助額を最大限に活かしやすくなります。見積もりを1社だけで決めず、複数社を比較することの重要性は、解体費用に限らず遺品整理等でも共通しており、遺品整理で「見積もりより10万円高い」請求もでも同様の注意点を紹介しています。
対象になる建物の要件
この制度でいう「老朽危険空き家」は、宇都宮市の処分基準に基づく特定空家等であって、次のいずれかに該当するものです。
- 旧耐震基準の建物:昭和56年5月31日以前に建築されたもの
- 接道要件を満たさない建物:建築基準法上の道路に2メートル以上接していない敷地にあるもの
昭和56年5月31日は、建築基準法の耐震基準が新耐震基準に切り替わった境目の日付として広く知られています。実家がこの日付より前に建てられている場合、この要件に該当する可能性があります。もう一つの「接道要件を満たさない」という要件は、再建築が難しい、いわゆる「再建築不可」に近い立地の建物を想定した基準と考えられます。前面道路の幅員や、道路への接し方によって該当するかどうかが変わるため、正確な判定は市の窓口での確認が必要です。
図:宇都宮市の老朽危険空き家の対象要件(アまたはイのいずれか)
加えて、対象建物に所有権以外の私権(抵当権等)が設定されていないこと、他の補助制度による交付を受けていないことも要件とされています。敷地内で家庭菜園等の利用形態が確認できる場合や、居宅と同一敷地内の倉庫等は、対象から除かれるとされています。
抵当権が設定されていないことという要件は、実家がまだ住宅ローンの返済中であったり、過去に事業性の融資の担保に入っていたりする場合に、見落とされやすいポイントです。相続した実家であっても、亡くなった親の代にローンを完済していない、あるいは完済していても抵当権の抹消登記をしていない、というケースは珍しくありません。抵当権の有無は、法務局で登記事項証明書を取得すれば確認できます。実家の解体を検討する段階で、まず登記事項証明書を取り寄せ、権利関係を確認しておくことをおすすめします。
申請者の要件:所得制限に注意

申請者は、対象建物の所有者等(個人に限る)で、次の要件をすべて満たす必要があります。
- 市税を滞納していないこと
- 権利関係者全員の同意があること
- 世帯の収入がある者全員の合計所得が818万円以下(単身世帯は780万円以下)であること
- 申請者・世帯員・権利関係者の中に、過去にこの補助金を受給した者がいないこと
- 空家等対策の推進に関する特別措置法第14条第3項の命令を受けていないこと
- 暴力団員またはこれと密接な関係を有する者でないこと
この中で特に目を引くのが、世帯の合計所得818万円以下(単身世帯780万円以下)という所得制限です。これまで当サイトで紹介してきた松山市・東京都北区・茨城県日立市等の補助制度には、こうした所得要件は見当たりませんでした。宇都宮市の制度は、経済的に解体費用の捻出が難しい世帯を、より優先的に支援するという考え方に基づいていると考えられます。
この所得制限の考え方は、生活保護や各種の福祉的な給付制度で用いられる所得基準と近い水準に設定されているとも考えられます。実家を相続した子世代が、すでに独立して自分の家庭を持ち、実家とは別の住居で生計を立てている場合、実家の除却を申請する際の「世帯」は、あくまで申請者自身が現在属している世帯を指すと考えられます。つまり、実家の所有者(相続人)本人と、その配偶者等、同一の住民票上の世帯に含まれる人の所得が合算の対象になるのが基本的な考え方です。ただし、権利関係者(共有者等)が別世帯にいる場合の扱いなど、細かい点は市によって運用が異なる可能性があるため、正確な判定は必ず宇都宮市の窓口に確認してください。
ここが間違えやすいので注意!
所得制限は「申請者本人」だけでなく、世帯の収入がある者全員の合計所得が対象です。実家に親と同居していた家族がいる場合や、共働き世帯の場合は、複数人分の所得を合算して判定される点に注意してください。また、過去にこの補助金を受給した世帯員・権利関係者がいると再度の申請ができません。実質的に一世帯一回限りの制度と考えておく必要があります。
令和8年度の受付期間と工事完了期限
令和8年度(2026年度)の申請受付期間は、令和8年4月1日から令和8年5月29日までです。予算枠の総額は公式ページに明記されておらず、確認できませんでした。工事は、宇都宮市内、または栃木県の解体工事業登録を受けた業者に請け負わせ、令和8年12月31日までに完了・支払いを済ませる必要があります。
受付期間が約2か月間と、他の自治体(通年先着順や、締切のある単発募集)と比べてやや特殊な設定になっているため、4月・5月のタイミングを逃すと、次の年度まで申請できない可能性があります。実家の解体を検討し始めた時期によっては、翌年度の受付を待つことになる場合もあるため、早めにスケジュールを確認しておくことが大切です。
また、事前調査申請から交付決定までにも一定の期間がかかると考えられるため、受付開始(4月1日)を待たずに、年度が替わる前後から書類の準備を始めておくことをおすすめします。登記事項証明書の取得、位置図の作成、現況写真の撮影といった事前調査申請の準備は、受付開始前でも進められる部分が多いはずです。所得証明書は、原則として前年の所得に基づいて発行されるため、発行時期によっては最新の証明書がまだ取得できない場合もあります。市区町村の税務担当課で、いつから新年度分の所得証明書が発行されるかを確認しておくとよいでしょう。
申請から補助金交付までの流れ(7ステップ)
宇都宮市の制度は、「事前調査申請」と「交付申請」の2段階に分かれている点が特徴です。
図:宇都宮市老朽危険空き家除却費補助金の手続きの流れ(交付要綱をもとに作成)
①の事前調査申請では、対象建物が「老朽危険空き家」に該当するかどうかを市が判定します。この判定を経て初めて、③の正式な交付申請に進める仕組みです。①の事前調査申請の段階で、すでに登記事項証明書等の書類が必要になるため、解体を思い立ったらまず書類の準備から始めることになります。
必要書類
段階ごとに必要な書類をまとめると、次のとおりです。
| 段階 | 主な必要書類 |
|---|---|
| ①事前調査申請時 | 不動産登記事項証明書等(所有者証明)、対象建物の位置図・現況写真、その他市長が必要と認める書類 |
| ③交付申請時 | 見積書の写し、世帯全員記載の住民票の写し、世帯の収入者全員の所得証明書、市税完納証明書、跡地利用計画が分かる書類、戸籍謄本(相続人の場合)、その他必要書類 |
| ⑥実績報告時 | 解体事業者への支払い確認書類(領収書等)、除却後の写真、交付決定通知書の写し |
相続人が申請する場合は戸籍謄本が必要になり、所得制限の確認のために世帯の収入者全員分の所得証明書を揃える必要があります。同居していない相続人がいる場合、住民票上の「世帯」の範囲をどう扱うかによって、必要な書類の範囲も変わる可能性があるため、事前調査申請の段階で市に確認しておくとよいでしょう。
対象経費と、代理受領という仕組み
補助の対象は、老朽危険空き家(付属物を含む敷地全体)を除却し、更地にする工事一式です。明確に列挙された対象外経費のリストは公式ページからは確認できませんでしたが、他の補助制度と重複する経費は対象外とされています。
宇都宮市の制度で注目したいのが、補助金の受領権限を解体事業者に代理委任できる規定です。通常、補助金は工事完了後に所有者(申請者)の口座に振り込まれるため、いったん解体費用の全額を立て替えて支払う必要があります。しかし、この代理受領の仕組みを使えば、補助金相当額を差し引いた金額だけを施主が負担し、補助金部分は市から直接解体業者に支払われる形にできる可能性があります。まとまった資金をあらかじめ用意するのが難しい場合、この仕組みが使えるかどうかを事前に確認しておくと、資金計画を立てやすくなります。
多くの自治体の解体補助金は、いったん所有者が解体業者に全額を支払い、後日、市から補助金相当額が所有者の口座に振り込まれる、という順序になっています。この場合、補助金が実際に振り込まれるまでの数週間から数か月の間、解体費用の全額を立て替えておく必要があるため、まとまった手元資金がない世帯にとっては負担になりがちです。代理受領の仕組みが使える場合は、この立て替えの負担を軽減できる可能性があるため、資金繰りに不安がある場合は、交付申請の段階で市の窓口に相談してみることをおすすめします。
他の自治体の制度と比べてみる
これまで当サイトで紹介した自治体の制度と、宇都宮市の制度を比較すると、次のようになります。
| 項目 | 宇都宮市 | 愛媛県松山市 | 名古屋市 |
|---|---|---|---|
| 補助率 | 3分の2 | 5分の4 | 1/3または2/3 |
| 上限額 | 70万円 | 100万円(島しょ部160万円) | 40万円または80万円 |
| 所得制限 | あり(世帯合計818万円以下等) | 記載なし | 記載なし |
| 受付方式 | 期間限定(4月〜5月) | 期を分けた募集枠制 | 通年・先着順 |
所得制限の有無は、宇都宮市の制度を他の自治体と分ける最大の特徴です。松山市の制度は松山市の老朽危険空家除却補助金、名古屋市の制度は名古屋市の老朽危険空家等除却費補助金で詳しく紹介しています。同じ「老朽危険空き家の解体補助」という名前でも、自治体によって対象者の考え方が大きく異なることが分かります。
所得制限を設けている背景には、限られた予算を、より支援の必要性が高い世帯に優先的に配分したいという自治体の考え方があると推測されます。一方で、所得制限のない自治体では、危険度や老朽度といった建物側の状態のみを基準にしており、申請者の経済状況は問われません。実家がどの自治体にあるかによって、「使えるかどうか」の判断材料そのものが変わってくるため、複数の兄弟姉妹で実家を共有している場合等は、誰が申請者になるかによって所得の合算範囲が変わる可能性がある点も、あわせて意識しておくとよいでしょう。
実家じまいとの関わり
宇都宮市に実家があり、この補助金の利用を検討する場合、次の点を押さえておくとよいでしょう。
- 所得制限を早めに確認する:世帯の収入者全員の所得を合算して818万円(単身780万円)以下かどうかを、申請前に確認しておく
- 受付期間が短い(4月〜5月):期間を逃すと翌年度まで待つ必要が出てくる可能性がある
- 代理受領の仕組みを確認する:資金の立て替えが難しい場合、補助金を業者へ直接支払ってもらえるかを相談する
解体後は固定資産税の住宅用地特例が外れる可能性があります。解体すると補助金はもらえるが固定資産税は上がる?もあわせてご確認ください。実家の解体費用のおおよその目安を先に知りたい場合は解体費用かんたんシミュレーターをご利用ください。
よくある質問
Q. 所得が818万円をわずかに超えていました。分割して申請すれば大丈夫ですか?
要件は「世帯の収入がある者全員の合計所得」であり、申請の仕方を変えても所得の合計額自体は変わりません。所得制限を満たさない場合、この補助金の対象にはならないと考えられます。他に利用できる制度がないか、市の窓口にご相談ください。
Q. 令和8年度の受付(4月1日〜5月29日)を過ぎてしまいました。
公表されている受付期間を過ぎた場合、その年度の申請はできない可能性が高いです。翌年度以降の受付時期は、例年同じ時期(4月〜5月頃)とは限らないため、宇都宮市の公式ページで最新の案内を確認してください。
Q. 抵当権が設定されている実家でも申請できますか?
この制度では、対象建物に所有権以外の私権(抵当権等)が設定されていないことが要件とされています。住宅ローンが残っている等で抵当権が設定されている場合は、原則として対象にならないと考えられるため、事前に市の窓口にご確認ください。
Q. 昭和56年6月1日以降に建てられた家でも対象になりますか?
旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)に該当しなくても、建築基準法上の道路に2メートル以上接していない敷地にある建物であれば、もう一方の要件に該当する可能性があります。いずれの要件にも該当しない場合は、対象外になると考えられます。
Q. 過去に家族の誰かがこの補助金を受け取ったことがあります。もう一度申請できますか?
申請者・世帯員・権利関係者の中に過去の受給者がいる場合は、要件を満たさないとされています。実質的に一世帯につき一度限りの利用を想定した制度と考えられます。詳しい取扱いは市の窓口にご確認ください。
Q. 実家に住んでいた親は施設に入居中で、名義は親のままです。子である私が申請できますか?
申請者は対象建物の「所有者等」とされており、所有者本人からの同意や委任があれば、家族が手続きを進められる場合があります。ただし、名義人本人の判断能力の状況によっては、成年後見制度の利用が必要になることもあります。判断能力が低下している場合の実家の処分については、成年後見の申立て、年間4.3万件にもあわせてご確認ください。
Q. 補助金の入金までどれくらいの期間がかかりますか?
実績報告(様式第7号)の提出から、市による審査(額の確定)を経て、交付請求(様式第9号)を行った後に振り込まれる流れになります。具体的な所要日数は公式ページに明記されておらず、案件ごとの審査状況によっても変わると考えられるため、実績報告時に市の窓口へ目安を確認しておくとよいでしょう。
まとめ
宇都宮市の老朽危険空き家除却費補助金は、除却費の3分の2(上限70万円)という手厚い補助率が特徴ですが、世帯の合計所得818万円以下(単身780万円以下)という所得制限が設けられている点が、他の自治体にはあまり見られない独自要件です。対象建物は旧耐震基準(昭和56年5月31日以前)か接道要件不適合のいずれかに該当する必要があり、令和8年度の受付期間は4月1日から5月29日までと期間が限られています。実家がこの市内にある場合は、所得要件と受付期間の両方を早めに確認し、事前調査申請から準備を始めることをおすすめします。
所得制限や受付期間の限定は、一見すると利用のハードルが高いように感じられるかもしれません。しかし、要件さえ満たしていれば、除却費の3分の2という高い補助率を活かせる制度でもあります。まずはご自身の世帯の所得と、対象建物の要件(旧耐震基準または接道要件不適合)に当てはまるかどうかを確認し、当てはまりそうであれば、令和8年度の受付期間中に事前調査申請の相談から動き出すことをおすすめします。最新の要件や受付状況は、必ず宇都宮市の公式ページでご確認ください。